第93話 助かった!
「センセ~どこの食堂も真っ暗で閉まってるよ~」
「変だなあー夜は、みんな出て歩かないのかなあ~……困ったなあ」
「センセ、何か寒くなってない?…………どこでもいいから、家の中に入りたいよ~」
「あ、ああ……ぶるっ……夜は冷えるんだな…………あ、ここも食堂じゃないか?小さい看板があるぞ!」
「もー、センセ……早く、ここで聞いてみよ!……何か食べさせて~」
ドンドンドン……ドンドンドン……
「はーい、どなたじゃ?」
「す、すいません。ここは、食堂じゃないですか?」
「あー、昼間は食堂をしておるが……」
「お願いです。何か食べさせてください」
「ん?夜は、やってないんじゃよ…………早く宿屋へ帰って食べた方がいいぞ。これから益々寒くなるだろうから」
「そ、それが、泊まるところが無くて……」
「ねえ……お願い、食べなくてもいいから、中に入れて!……寒くて、死にそうよ!」
「なんだ?お嬢ちゃんもいるのかい?…………ほれ、早く入んなさい」
小さな食堂の入り口が、中から開けられた。
そこには、髭を蓄えた体のがっしりした男の人が店の中に招き入れてくれた。
ただ、髪の毛と髭にはたくさんの白髪が混じり、手や顔には深い皺が刻まれていた。
「じいちゃん?誰かお客さんかい?」
「はあー、助かりました……ありがとうございます」
「うわあ、中は暖ったかいのね……センセ、良かったね」
「あれ?おじさん達は、旅の人かい?」
部屋の奥から現れた男の子は、背丈はボクと同じくらいなのだが、あどけない顔を見ると、アルよりも年下かもしれない。
「はい、夕方この町に着きました。でも、もう宿屋が満員だとかで、泊まるところが無いのです」
「ジャラス、じいちゃん、ウチに泊めてあげなよ……これから宿屋を探すのも大変だよ」
「あ、兄ちゃん。でも?ウチは宿屋じゃないから、部屋が無いよ!」
「部屋ならオレの部屋を使えばいいさ…………オレはお前の部屋に入れてくれよ!……なあ、じいちゃん、いいだろ?」
「うーん……お前たちがそれでいいなら、ワシャ構わんが……」
「うん、ボクもいいよ。久しぶりに兄ちゃんと一緒に寝れるから」
「うわ~、何とお礼を言っていいか、本当にありがとうございます」
「おじいさん、ありがとうございます…………それに、ジャラス君?……と……」
「あ、オレはドガスって言うんだ」
「ドガス君も、本当にありがとう!」
アルが、二人の男の子の手をとって、満面の笑みで感謝を伝えると、彼らは少し恥ずかしそうに頭を掻いていた。
お兄さんのドガスは、おじいさんと同じく、体ががっしりしていて、背も高かった。
「ドガス君って、とっても背が高くて、力もあるように見えるんだけど……」
「ああ、オレ達は、猿人族なんだ。だから、力は人一倍あるんだぜ!」
「へー、あたしもハーフエルフだから、力は強いのよ…………でもね、寒いのは苦手なの」
そんなベルとドガスの話を聞きながら、おじいさんは嬉しそうに調理場へ向かった。
「まあ、これも何かの縁だ。今、晩飯を作ってやるから、食べたら、ウチに泊まっていきなさい」
「「はい!ありがとうございます!」」
ボクとアルは、思いっきり頭を下げてお礼を言った。
(つづく)
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