第91話 めざせプッピの町
「センセ~待ってよ~」
「何言ってんだよ~アル!お前が、さっさと歩かないから、シベトの町を出発して4日もたっちゃったじゃないか…………。
食堂のおばちゃんは、プッピの町までなら2日もあれば大丈夫だって言ってたのに……」
「だってさ~家があったから…………」
「あのな~家を見るたびに、今晩泊めて下さいって……そりゃ、4日もかかるよ」
「だって、だって……食堂のおばちゃんは、プッピの町までは宿は無いって言ってたから………」
「ああ、だから野宿しながらって、言ったじゃん」
「だから……だから……ちょっとでも家を見つけたら、泊めて欲しいなって……」
もー、まだ暗くならないうちに、小さな村を見つけては、宿をお願いするんだもんな。アルには、まだ野宿が無理なのかなあ。
ま、確かに時間はかかったけど、家の人と仲良くなれたし、晩ご飯もご馳走になれたから、仕方ないか…………そんなに急ぐ旅じゃないし…………。
「アル、今日はプッピの町までは行くからね!」
「分かったよ、センセ…………ねえ、プッピでは宿屋に泊まれるんだよね!」
「まあ、一応町らしいから、宿くらいはあると思うけど……」
「わーい!やっとお風呂に入れる!」
そうこうしているうちに、遥か前方にとてつもなく高い山が見えてきた。
「アル、あの山がオオスヘール山だ。昨日泊まった家のマリさんが教えてくれた山だ」
「スッゴイ高そうだねセンセ…………上の方が真っ白だよ!」
この山は標高が高く、夏でも雪が溶けないそうだ。この山を越えないと、東の大陸へは行けないのか…………大変そうだなあ。
「センセ!あれ、スヘールだよね!こんなに暖かい時期なのに、スヘールに触れるなんて、嬉しいよね!センセ、また、スヘールで人型作ってよ!」
「う、うん……そんな余裕があったらな……」
ボクは、山の半分から上が真っ白なのを見ると、きれいというよりも、何か嫌な予感しかしなかった。
「センセ、あっちに町が見えてきたよ!……あそこがプッピの町だね!」
「ああ、あのオオスヘール山の麓にあって、これからあの山を越えるための準備をしなければならない町なんだ」
東の大陸へ行くには、あのオオスヘールの山を越えるしか道はないようだ。でも、あの山は普通に歩ける山じゃないらしい。それなりの準備をしないと、あの真っ白い雪に飲み込まれてしまうそうだ。
「そう言えば、マリさんが言ってたよね。あの山のスヘールは、“白い魔女”だって」
「どんな魔法を使うのか…………」
「でもねセンセ、マリさんはね、“白い天使”もいるって言ってたよ。無事にオオスヘールの峠を越えることができたら、“白い天使の祝福”がもらえるって……」
「へー、魔女なのか、天使なのか、…………ボク達は、どちらに会えるのかなあ……」
この辺りはもう山になっているのか、プッピの町に近づくにつれ、空気が少し冷えているような気がした。
シベトの町からここまでは、何軒かの家はあったが、本当に小さな村が何か所かだった。
周りは、広大な草原になっていて、ところどころに作物を育てている畑が点在していた。気温がそんなに高くならないと見えて、作物もそんなに大きくはなかった。寒いところでも育つ“葉物の野菜”が多く作られているようだ。
ま、これも、夕べ泊めてもらったマリさんの受け売りなんだが。
マリさんは、お母さんだった。
ボクの世界というと、小学校の低学年くらいの男の子と2人暮らしだった。
5年前、この辺りに魔獣が出た時、お父さんは家族を守って戦い、亡くなったそうだ。
この辺もやっぱり魔獣が出没するようだ。特に、高い山とかは、気を付けた方がいいのかなあ…………。
(つづく)
お読みいただけて、とても嬉しいです。
”いいね”も付けていただけて、心よりお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。