第86話 食べること!
「んんん……まあ、作れるんだ…………けど……ちょっとなあーー」
「え?ちょっと?って、何なんですか?」
「いやあ、大したことではないんだ。
……ウチの両替所では、肉の加工もやっていて、それをあちこちの肉屋や他の大陸へも売って儲けているんだが、加工は魔法でやってるんだ」
「魔法?ひょっとして、この杖で?」
「ああ、でも、今は違う杖を使っているんだ。この杖は、以前使っていたもので、作れる干し肉の量が決まっていてな」
「作れる肉の量が決まっている?」
「そう、以前は、この両替所も出来たばっかりだったし、この町を訪れる人も少なかったから、十分役に立ってたんだ。
…………でも、今は、だいぶお客さんも増えてな。もっと大量に作れる杖を準備できたんだ」
「じゃあ、この杖は、どのくらいの量が作れるんですか?」
「うーん、その杖を使う者のお腹がいっぱいになる量が限界値なんだ。
…………以前、その杖で肉を加工していた奴は、大柄な巨体をした魔法使いだったんだ。だから、一回に加工できる肉の量は、結構多かったんだよ。
それでも、加工が間に合わなくなってきて、新しい杖を手に入れたんだよ」
「ということは、この杖をあたしが使ったら、あたしの食べる分だけの量しか、加工できないってことなの?」
「ああ、そうだ!でも、商売をするわけじゃないし、自分達の食べる分だったら、十分じゃないのか?」
「あはははははは……それはいい!……十分じゃないか、アル!……アルの食べる分だけ、加工できるなんて、最高だよ!」
「ええ?センセ!……そんな言い方されると、あたしが馬鹿みたいに、いっぱい食べるみたいじゃないの?」
「あははは……ごめんよ!でも、アルの食べる量は、凄いからなあ。これで、自分でブラッキーの干し肉を作れるなんて嬉しいね!」
「よし、決まりだな!ほらっ、魔法の杖だ。大事に使ってくれ。……もちろん、どんな肉だって、干し肉にできるからな!」
アルは、少し複雑な表情をしていたが、ボクは念願の料理能力が身についたみたいで、とっても嬉しかった。まあ、加工するのは、アルなんだけど…………。
後は、町の中をブラブラ歩きながら、武器屋を覗いたり、果物や野菜を売っているお店を覗いたりした。
旅の持ち物はあまり増やしたくないので、できるだけ買い物はしなかったが、着替えの服と夜寝る時の寝間着は、絶対欲しいとアルがいうものだから、あちこちのお店を見て回った。
買い物を終えてから、ボクはアルを連れて少し町はずれの林に向かい、飛んでいるブラッキーを捕獲した。そして、試しにその場で杖を使って、アルに干し肉加工をしてもらった。
「おおおお!見事な干し肉ができたな!」
「魔法も簡単だったわ……それに、5羽だったけど、余裕で加工出来たわ。これ、あたしの新しい魔法ね!」
使える魔法が増えて、アルはとても嬉しそうだった。
「よし、このブラッキーの干し肉を宿屋の食堂のおばちゃんにあげて、また、美味しい料理を作ってもらおう!」
「やったーセンセ!あたし、もう、お腹ペコペコよ!」
(つづく)
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