第85話 美味い話?
「じゃあアル、今日はこの町でいろいろな用事を済ませて、明日の朝ここを出発しよう」
「分かったよセンセ!……うふっ、今日もここに泊まれるのね!」
「ああ、今日は、夜の食事もしっかりとって、お風呂にも入るぞ!……だから、アル、頼むから暗くなっても、すぐには寝ないでくれよ!」
「あはははは…………がんばりまーーす!」
「初めに、家から持って来たブラッキーを両替所へ持って行こう」
「そうね、美味しく食べられる肉にした方が楽しいもんね!」
「まあ、少しはお金にするのもいいかなあと思っているんだ。
きっと、これからの旅は、お金も必要になると思うんだ!」
「そっか、ブラッキーなら、どこにでもいるから、すぐ捕まえられるもんね!」
「うん…………ただ、ブラッキーを食べられる肉に加工する方法とここの食堂のように美味しく調理する方法がしりたいなあーー」
それは、後から誰かに聞くことにして、朝食を済ませて、2人で両替所へ出かけた。
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「……え?あんた凄いな、こんなにブラッキーを捕獲したんだ!」
「いや、まあ……凄いって言われても、これはほんの一部で、持ってこれる分だけんなんですが…………」
「それでも、凄いよ!ブラッキーは、空を飛んで逃げるから捕まえるのが大変なんだよなあ。だからうちの両替所にも、あんまり持ち込まれないんだ。ブラッキーの肉は、美味しいのにな」
「ああ、ありがとうございます……ところで、これを干し肉と交換してもらえるって聞いたんだけど」
「ああ、できるよ。料金分は、引かせてもらうけど…………ただ、今、うちにブラッキーの干し肉は無いんだ。だから、この肉を干し肉にしなきゃならないから、ちょっと時間がかかるけど、いいかい?」
「え、どのくらいかかるんですか?」
「そうさなあ~、実は、今、ヒマグーの肉が大量に持ち込まれて、その干し肉作りで忙しいんだ。一ヶ月は待ってもらわないと、できないかなあ~」
「ねえ、センセ。うふっ、じゃあ一ヶ月もここに泊まれるの?やったー!」
「アル?何を喜んでるんだい?
……ここに一月も泊まれる訳ないじゃないか。そんなことをしたくても、お金が足りないよ。それに、旅を急がなくていいのかい?」
「あああ、そっかー…………じゃあ、どうするの?」
「困ったなあ~このままブラッキーを持っていても、上手く食べられないんじゃ、意味がないし…………」
「なあ、あんた達は旅をするのかい?」
「ええ、ボク達は、王都を目指すんです」
「ほおおー、そりゃ、長い旅だねええ…………時に、ちょっと聞くけど、あんた達はブラッキーをすぐに捕まえられるのかい?」
「まあ、一羽や二羽なら難しいかもしれませんが、普通に固まってたくさん飛んでいるなら、10羽や20羽は、すぐです。…………まあ、捕まえるのは、ボクじゃなくて、このアルなんですが…………」
「へえ、お嬢ちゃん、凄いんだね!…………じゃあさ、このあんた達がもってきたブラッキーを全部うちで買い取ってやるよ!」
「でも、それじゃあ、干し肉が手に入らないんですが……」
「うん、だからブラッキーの代金として、銀貨じゃなくて、この杖をやるよ!」
「え?センセ、こんな杖をもらっても、お箸にしかできないよ!あ、1本じゃお箸にもならないか…………えっと、2本ください!」
「いやいや、お嬢ちゃん。2本は、無駄だから…………この杖は、魔法の杖なんだ。見たところお嬢ちゃんは、エルフさんだろ?」
「あのー、あたしはハーフエルフなの!」
「ああ、大丈夫だ。ハーフエルフでも、魔力はあるだろう?」
「ええ、魔力はあるみたい…………でも、使える魔法はヒールが少しだよ」
「大丈夫、そんなの関係ないんだ。魔力さえあれば、この杖が使えるんだ……どうだい?この杖とあんた達がもってきたブラッキーを交換しないかい?」
「えーっと、だいたい分かりましたが、いったいその杖は、どんな魔法が使えるんですか?」
「おーっと、そうだった!この杖の魔法はな……“干し肉製造魔法”が使えるんだ!」
「え?干し肉製造魔法?……じゃあ、この杖さえあれば、干し肉が作り放題なんですか?」
「んんん……まあ、作れるんだ…………けど……ちょっとなあーー」
(つづく)
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