第84話 父の功績
「センセ!これ、美味しいね!」
「これが、あのブラッキーの肉なんだ!ボク達もたくさん捕まえたけど……」
「お父様が、たくさん持って行けって、カバンにいっぱい入れてくれたわ」
「うーーん、でも、ボク達が持ってきたのは、ブラッキーのままなんだよなあ…………まだ、食べられる肉には加工してないもんなあ~」
「……え、お嬢ちゃん達、このブラッキーを捕まえたのかい?」
料理を運んでくれた、さっきのおばちゃんが、ボク達に声を掛けてきた。
「はい、でも、加工してないから、こんなに美味しくは食べられないんです」
「大丈夫だって!
その捕まえたブラッキーをこの町の“両替所”へ持っていきなよ。そしたら、長持ちして美味しく食べられる“干し肉にしたブラッキー”と交換してくれるよ。
…………交換しなくても銀貨何枚かで買い取ってもくれるからさ」
「やっぱり、この町には、そういうお店があるんですね!」
「まあね、ここは“悪魔の1年”の前までは、北の大陸の中で、1番の大きな町だったのさ。
もちろん、冒険者もたくさん集まっていたんだ。
だから、冒険者ギルドがあって、魔物退治の仕事を斡旋したり、倒した魔物から得られる宝物なんかを買い取ってくれたりしていたんだ」
「そんな、大きな町だったんだね!」
「そうさ、お嬢ちゃん。
ところが、あの“悪魔の1年”の時、魔物を倒しても何も宝物が得られなくなったんだ。すべて、魔王が吸い取っていたんだ。
……だから、この町のギルドもやることが無くなってしまったんだよ。
しかも、魔物が暴れて、町の建物をすべて壊してしまったから人も住めなくなってさ。
…………最近だよ、ようやく人が戻って来て、少しずつ町にお店が出来るようになったのは」
「そうだったんですか…………」
「ああ、これもすべて、ジョンディアさんのお陰なんだよ!」
「え?おとう…ムッム?」
ボクは、慌ててアルの口を手で塞いだ。
「おや、お嬢ちゃん、ジョンディアさんを知っているのかい?」
「ああ、いえ。このアルの知り合いに、似たような名前の人がいたんですよ……」
あまりか軽々しくジョンディアの娘だということは、言わない方がいいとジョンディアさんに言われていたので、咄嗟に言い訳をしてしまった。
その事は、アルにも言ってあったが、アルは驚いて口を滑らせてしまいそうだった。
「まあ、似た名前かい…………
ジョンディアさんに憧れて、似たような名前を付ける人も多いからね。
………とにかく、ジョンディアさんは魔王封印の後、この近くに出没する魔獣を倒してくれたんだ。お陰で、町が平和になったと噂になり、少しずつ人が戻ってきたんだよ。
なんていったって、魔王を封印した“セブン エアルマ”の一人だからね!英雄さ!」
「あ、あ、ありがとうございます!」
「おや?なんでお嬢ちゃんがお礼言うのさ?……面白い娘だね、あははははは…」
おばちゃんは、また、笑いながら別のお客さんのところへ行った。
「センセ…………やっぱりお父様って、凄いんですね!」
「ああ、でもねアル、君だってお父さんの後を継ごうっていうんだから、凄いんだよ!……君は、君のできることを頑張ればいいんだよ………」
「うん………………」
(つづく)
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