第80話 夕暮れの眠り
「センセ~…………」
「ん?どうした?アル…………」
ボクの後ろを歩いていたアルが、しばらく黙っていたと思ったら、ボクの背中に呼びかけてきた。
最初は、ボクの前を元気に歩いていたのに、いつの間にかボクより大分後ろになっていた。
「センセ~お腹空いたよ~…………もう、歩けないよ~…………」
「えーー?まだ、半日も歩いてないぞー。もうへばったのか?」
「違うよ~センセ…………魔物が出ないから、戦う力が出ないんだよ~」
「あーはいはい。でもな、今は歩くのが、戦いなんだけどな~…………まあ、じゃあこの辺で弁当でも食べるか?」
「え?お弁当があるの?…………早く、早く。お弁当食べよ!ね、センセ!」
「……うーん……あそこの大きな木のとこで食べることにするか!」
「よーし、あたし、元気がでたわ!あそこ迄、走って行くわ!センセも早くね!」
おいおい、途端に元気になって、走り出したな。まったく、先が思いやられるなあ。
「うわあああい、干し肉だ!これ、美味しいのよね~これ、“カシゾエ”の肉よ、ご馳走じゃない!」
「“カシゾエ”って、4本足で走ると早い、頭に角の生えている獣か?」
「そうそう、なかなか狩れないので、お母様もあまり料理には使わないの!でもね、これ美味しいのよ」
「へー、そうなんだ。これ、ハーティさんが、出かけに持たせてくれたんだ」
そう言えば、『アルには、しばらく内緒にね!』って、言ってたのは、こういう事か!
「もー、お母様ったら、あたしに言ってくれれば、すぐにお弁当にしたのに」
「ふーん、アルに言ったら、歩く前からお弁当になってたかもな~」
「え?何のこと?」
「あ、いやいや、こっちのことだよ。さあ、カシゾエ肉をパンヌに挟んであるんだ。さあ、どうぞ、アルさんや!」
「はい、いただきま~す!ウグ、ウグ、モグモグモグ……あー美味しい!」
「アル~?そんな一口で食べなくっても、無くならないよ!ほら、まだたくさんあるから……ハーティさんが、いっぱい作ってくれたから」
「あ?はあああ…………ふぉーなんだ!あはははははは」
それから、一休みして、今日はのんびり歩くことにした。
そして、ようやくシベト町についたのは、夕方になっていた。
「さあ、アル、着いたね。どっか泊まれるところを探すか?」
「ふぇへ?泊まれるふぉころ?……どこれもひひよ~」
あれ?アルは、ひょっとして眠たくなった?おいおい、ちょっと早いんじゃないか?
「おい、アル?アル?……まだ、寝るなよ!」
「こらや、急がないと……あ、あそこの宿屋にしよ!」
「へい、いらっしゃ!二人だね……ほら、二階の部屋が一つ空いてるよ」
「え?あの、もう一部屋ありませんか?」
「二部屋いるのかい?……大丈夫かい?」
「え?何がです?」
「だって、お連れさん、もう寝てるだろ?一人でほっとくのかい?」
「あっちゃー、間に合わなかったか~…………」
アルは、もうボクの背中のバックに覆いかぶさって、ぐっすり眠っていたのだった。
(つづく)
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