第78話 見送り
天気はとても良かった。
暖かい太陽の光が、ボク達を照らしてくれている。もう、夏も近いのか、そよ風が気持ちよく感じる。
「アル!いいかい。
お前は、エルフとして大人になったから、自分の進むべき道を自分で決めたんだ。
わし達は、お前が決めた道を心から応援しているんだ。だから、自信をもって成し遂げて欲しい。
…………でもな、困った時は、誰かを頼るのも、大人なんだ。
もちろん、わし達を頼ってくれていいんだ…………その時は、全力で手助けするからな。
それが、大人っていうもんだ!」
「ありがとう、お父様……あたし、精一杯頑張ってみるから、応援してね」
「分かってるわよ、アル…………また、いつかきっと会えるからね……………」
ボク達は、旅に出るのではない。巣立ちなのである。
ボクは、2年間過ごしたこのウシュラ村を第2の故郷だと思ってきた。そのウシュラ村にはもう帰れないという気持ちが強くて、少し悲壮感をもってしまった。
しかし、アル自信もアルの家族も、この巣立ちは新しい希望へ向けての飛躍だったのだ。
それは、彼らの交わす言葉を聞けば、よく分かる。
誰も、悲しい気持ちなど微塵も感じていない。決して、お互いに隠している訳でなく、素直に心配なことを伝え、お互いの頑張りを引き出そうとしている。
「センセ!そんなに心配しなくてもいいよ!あたしが、しっかり守ってあげるからね!」
「え?あれ?……ダメだよ、ボクが勇気づけられたら…………ボクがアルに勇気をあげなくっちゃ!」
「そんなこと無いよ。あたしは、センセがいるだけで、勇気をもらってるんだもの!少しくらい、あたしもセンセの為に頑張りたいの!」
「そうだ!アル!いいぞ。その調子で、二人で力を合わせていけばいいんだ!…………タロウ先生、頑張りすぎないようにな!」
「は、あ、はい…………」
ボクは、ジョンディアとハーティ、それにアルティシアを見ながら、なんていい家族なんだと心から羨ましくなった。
「じゃあ、そろそろ行くね。お父様もお母様も、元気でね!」
両脇に束ねた薄い木肌色の髪は、アルにとても似合っていた。そよ風を受けたその髪は、緩やかにカーブを描きながら肩よりも長く下になびいていた。
笑顔で挨拶をしたアルは、もう一度、しっかり両親の顔を見た後、ボクを振り返って、頷いた。
「さあ、センセ、出発よ!」
ボクは、大きなカバンを背負うと、アルの後をついて行った。
アルは、東に向けて歩き出した。目標は、東の大陸なのだが、まずはいつも買い物に出かけている町がある。
それ以上先へは行った事が無いアルだが、とりあえずは知っている町なので、気は楽なようである。
半袖のシャツと短パン姿のアルは、その上から重ねて着ているアーマードプロテクトがあっても、とても身軽に見えた。
家から少し離れた時、振り向いたボクの目には、まだジョンディアとハーティがそこに見えた。
手を振りながら、いかにも楽しそうに歩くアルの姿は、それを見守る両親をまるで引き付けているような気がした。
(つづく)
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初めて挿絵を入れてみました。なかなか服装が本編と合わせるのは難しくて、上着がタンクトップになってますが、いずれ改良するつもりです。




