第67話 雪山の険しい道
ボク達が、ジョンディア達を迎えに行く事を決めたのは、すでにお昼をまわった頃だった。
「センセ?これでいいかな?」
「ああ、またいつ吹雪いてくるかもしれないからね。暖かくして行こう!」
ボクとアルは、動物の毛を編み込んだ分厚い上着とズボンを身に纏った。帽子も頭全体が覆われるような毛皮で作られている。
手袋は、二重になった毛皮で、内側にも温かい毛がびっしりと編み込まれている。
「丁度、今はスヘールが止み、風も無くなっている。今なら、迷わず町を目指せる!」
「うん、センセ。きっと、途中で、お父様達と会うことができるわ」
「そうと、決まったら、急ごう!」
ボク達は、途中で魔獣と出くわすかもしれないので、武器も携帯した。僅かばかりだが食べ物もカバンに詰め込み、持っていくことにした。
これで、何があっても、頑張れる。ボクも、アルも、とにかく町を目指すことだけを考えていた。
町へ行くには、途中で山をひとつ超えなければならない。そんなに高い山ではないが、道は険しくて片側は切り立った崖で、もう片方は谷になっているらしい。
晴れた日でも、大変な道なのに、この季節にここを通るのは、容易な事ではないと思われる。
「なあ、アル?ジョンディアさんとハーティさんは、どうしてこんな時に、わざわざ町へ行ったんだろう?」
そんなに大事な用事があるとも思わないので、不思議でならなかった。
「んー、それはね、あたしも分からないの。ただ、お父様達は、前々から予定していたらしいのよ。二人で町へ出かけることは、何か大切な用事があったんだと思うの」
ボク達が家を出て、しばらく歩き山のふもとに近づいた頃には、あたりがだいぶ暗くなっていた。
夜が近づいてきたこともあるが、どうやらまた雪が舞いはじめ、周りの景色を白一色で覆い隠してきたからにちがいなかった。
「アル?なかなかジョンディアさん達と出会えないなあ~」
「そうね…………道は、これ1本しかないから、絶対に出会えるはずなんだけど……」
毛皮で作った暖かい靴を履いているので、ある程度の雪は掻き分けて進むことができた。それでも、風で舞い顔に吹き付ける雪は、冷たさと痛さを併せ持つ難敵だった。
「アル~あんまり急がないでくれよ~ボクは、スヘールが目に入って前が見えないんだ~」
「そっか、そーだねセンセ………………はい、つかまって!」
アルは、振り向くと右手をボクの方に差し出した。
「センセ!早く掴まって!」
「う、ああ、うん………」
ボクは、情けないことにアルが踏み固めた雪道を歩いている。しかも手を繋いでもらって、何とか追い駆けるような格好になって。
情けない!
それでも手袋ごしにアルの温もりが伝わって来るような感じがした。
何とか山を登り始めた時、不気味な音が聞こえてきた。
≪………ギャアアアウウウウウ…………ギャアアウウウウウ…………≫
人が二人並んで歩くのにやっとの道幅なので、何かに出会えば必ず分かる。左手は高く聳える崖肌で、右手は深い谷底になっている。
この道で、何かに出会えば、逃げる場所はない。
不気味な音は、だんだんと近づいてきているような気がした。
≪……ガコンガコン……ウギャアアアア……ガラガラズキュウウウ……≫
「センセ、後ろに下がって……」
アルは、剣を抜き身構えて、前方を凝視した。間違いなく、ボク達に向かって、何かが近づいて来ているのを感じた。
(つづく)
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