第7話 記憶の欠片 2
「センセ、こっちだよ~……おーい、はやくう~」
「まってーーえ、こらあ~……今行くぞ~」
「きゃははは……みんなタロウセンセにつかまるなよ~」
ジャングルジムの中を上に行ったり、横に動いたり、ボクは子ども達と、汗だくで遊んでいた。
もちろんボクは、手加減をする。力の弱い子にはそっと手を貸したり、元気のいい男の子にはタッチされないように寸でのところで交わしたりして、遊びを盛り上げるんだ。
暫くして一人の子が、ジャングルジムからの逃走経路として、滑り台を使い始めた。滑り台は、ジャングルジムの天辺に付けられていて、そこから地面へと滑り降りることができる。
この経路を使って、鬼のボクからうまく逃げ延びることができる子が増えてきた。
そんなことをしているうちに、一人の男の子がボクのタッチを潜り抜けて、滑り台に到着した。
男の子は、そのまま滑り台の手すりにしがみ付き、ジャングルジムの天辺から滑り降りようとしていた。
「あ!ジュンヤ!!危ない!!」
ボクは手を伸ばした。そして、ボクは、ジュンヤを抱えたままジャングルジムの天辺から落下してしまった。
「センセ!タロウセンセ!!……おきて!……おきてよセンセ!……うわああああああ~」
地面に抱えられたまま落下したジュンヤは、すぐに起き上がって、ボクを見て泣きじゃくっていた。
すぐに、他の先生達も駆け寄って来た。
もちろんそこで一緒に遊んでいた子ども達も、心配してボクの傍に集まって来た。そんなところぐらいまでは、ボンヤリと覚えている。
『……救急車!……早く、救急車を呼んで!……だめ!山口先生を揺すっちゃダメよ!…………だ………か、もう……………も…………きて……………………………』
覚えている?……思い出した?……なんのことだ?……………………
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『………タロウセンセ!………タロウセンセ!………大丈夫!……センセ!!』
「はあっ!……う、……ふうー…………夢か?……夢?………」
「タロウセンセ、とっても魘されていたわよ!……悪い夢でも見たの?……大丈夫?」
木陰で休んでいたら、ボクはいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
傍では、アルティシアが心配そうに覗き込み、ボクの様子を気にしている。
「ああ、夢………かな。……(いや、あれは夢ではないんだ。ボクは、あの時死んだのか?……じゃあ、ここは?)」
(つづく)
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