第66話 アルティシアの心の中は
次の日は、多少吹雪も収まって見通しも利くようになった。お昼ごろアルが、外の様子を見ながら、不安そうにボクに尋ねた。
「ねえ、センセ。お父様達は、大丈夫かしら?」
「え?大丈夫って、どういうこと?」
「あのね、こんなにスヘールが、吹き荒れる時は出るのよ!」
「アル?出るって、何が出るんだい?」
窓の外から目を離さないアルは、何かを必死で探しているようにも見えた。
「こんな季節には、魔獣も森の外へ出てくるの…………特に、見通しが悪い時はね」
「まあ、こんな日だから、誰も家の外へは出ないから、例え魔獣が出てうろついていても問題ないんじゃないか?……それとも、家でも壊して歩くのかい?」
「…………今までそんな事は聞いたことがないわ。…………でも………」
「何か、気になることがあるの?」
アルは、一向にボクの方を向かずに、外ばかり見ている。
「そんなに、気になることがあるなら、話した方がすっきりするよ、アル?」
「……たぶん、お父様達は、このスヘールの中を歩いているはずなの」
「え?でも、こんな見通しが利かないんだから、今日も町に泊まって来るんじゃないかい?」
「いいえ、センセ。あたしには、分かるの!きっとお父様達は、今日帰って来るわ。
たぶん、そうしないとまたスヘールが酷くなって、当分帰れないって考えると思うの」
アルは、漸く窓の外からボクに視線を移した。その眼には、確信とも言うべき光を灯していた。
それでもボクは、そんなアルが、何を望んでいるのかよく分からなかった。
「ねえアル?君は、何をそんなに心配しているの?
もし、ジョンディアさん達が、このスヘールの中をこちらに向かっているとしても大丈夫じゃないのかい?
例え、スヘールの中を魔獣がうろついていても、ジョンディアさんなら絶対に負けはしないさ」
「……そうかも、知れないけど…………あたし、心配で…………」
アルには、怯えているというより、彼らを守りたいという決意の意志がはっきりと見えた。
ここ最近、アルは魔獣と戦ってきた。実際に、魔獣は倒してきたが、その恐ろしさは身に染みて分かってきたと思う。
それでも彼女の中には、自分が恐ろしいという事より、この恐ろしさから人々を守りたいという気持ちが益々強くなったようだ。
「よし、分かったよ。アル、君のやりたいことをやろう!……ボクも手伝うよ!」
「センセ!いいの?……あたし、お父様達を迎えに行きたいの!」
「うん、じゃあ、準備をしっかりして、行く事にしよう!」
アルは、嬉しそうに笑顔になった。
ただ、すぐにボクの目を見て、真剣な表情で言った。
「…………センセ…………行くのは、あたし一人でいい…………また、センセを危ない目には合わせたくないの……センセは家で待ってて!」
ボクは、驚いた。アルが、そんなことを考えているとは思わなかったのだ。
いつの間にか、アルはボクのことも心配するようになっていたんだと、少し嬉しくなった。
それでもボクは、アルに強く言った。
「こら!アル!お前は、ボクの生徒なんだぞ!
……先生が生徒を一人で危険なところへ行かせられると思っているのか?
……一緒に行くから、さあ、準備だ!」
「…………………うん!…………分かったよ!センセ!(*^_^*)」
ボクも、アルも、最後は笑顔でしっかりと気持ちを確認できた。
ボク達は、がっちりと防寒できる格好をして、雪の中に飛び出して行った。
今は、まだ風も弱く、吹雪にはなっていなかったが、遠くの空は暗く、黒い分厚い雲がゆっくりと動いているのが見えた。
(つづく)
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