第64話 母譲りの心
「おめでとうアル!よく頑張ったわね!」
ハーティは、少し涙目になりながらアルがヒール魔法を使えたことに心からの祝福を送った。もちろんジョンディアも、手放しで褒めた。
あの後、しばらくしてボクは、動けるようになり驚くほどの速さで傷も無くなった。その間、懸命にヒールの魔法をかけ続けたアルは、些か疲れたと見えて眠そうな目を擦りながら帰ってきたのだ。
「それにしても、ごめんなさいねタロウ先生。先生に大怪我をさせてしまったようで。後で、私も回復魔法を施してあげますからね」
「ありがとうございます…………アルは、回復魔法を練習するのに、ワザと森で自分が傷だらけになって帰って来ていたんですね」
ボクは、傷を治してもらいながら、アルから詳しい話を聞いたのだった。
「ヒール魔法は、動物でもできるのよ。
だから練習する時は、森で動物相手に魔法をかけたりするの。別に怪我をしていなくても、毛並みが良くなったり、動きが俊敏になったりと、成果を確かめる方法はいくらでもあるのね。
でもね、アルは自分で試すって聞かないの」
「まったく、アルは無茶をしますね…………」
「えーー、お母様!だって、ヒール魔法は、魔法をかける相手のことをどれだけ考えることができるかだって、おっしゃってじゃない!
……だから、あたしは動物よりも自分を練習台にしたのよ。動物じゃ、あまり実感がもてないんだもの」
「確かにそうね…………だから、今回、あなたはヒール魔法ができたのよ、きっとね」
「え?どういうこと?」
「アル?それは、今、お前が自分で言ったじゃないか?あはははははは……」
嬉しそうにジョンディアは、アルとボクの顔を見比べて、高笑いをした。
「うふっ、そうよね、アル!ヒール魔法は、相手のことをどれだけ大切に思っているか……なのよね!」
ハーティも、嬉しそうにウィンクをしてアルの頭を撫でていた。
それからも、アルは、剣とヤミューと、それにヒール魔法の稽古をコツコツと繰り返していた。
もちろん、ヒールは森の動物や植物にかけて稽古をしていたが、時々ボクにも練習台になって欲しいと頼まれた。
わざと怪我をするわけではないが、普通にヒール魔法をかけられると、すこぶる体調がよくなるような感じがして気持ちよくなるんだ。これで、アルもいっぱしの魔法使いだと言えるんじゃないかと思った。
(つづく)
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