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第61話 誰のために?

「センセ、行ってきまーーす!」

「ん?今日は、また早いなー、いつもの森じゃないのか?」

「う、うーん……今日はね、ちょっと裏山の洞窟へ行ってみようかなーって、思ってるの」


「洞窟かー。洞窟なら新しい魔獣が出るかもしれないしな…………よし、今日はボクも一緒に行こう!」



「ダメ、ダメよ、センセは。

 …………えっと、あのね、あの洞窟は安全なの……魔獣なんか出ないのよ。

 ……あたしは、ちょっと…………あっ、そうそう、珍しい石を拾いに行くの!……だから、センセが居なくても大丈夫!

 ね、いいでしょ?あたし一人で行ってくるから!」



 アルは、その後、慌てるように一人で出かけて行った。


 そこへ、ハーティがやってきた。彼女は、少し元気が無いような気がした。アルの姿が見えなくなったのを確認するかのように、彼女はボクに話し掛けてきた。



「ねえ、タロウ先生。あの子、洞窟へ行くって言ってましか?」


「ええ、裏山の洞窟へ珍しい石を拾いに行くって……」


「………………タロウ先生、それは嘘なのよ。アルが洞窟へ行った目的は、“魔法の水”を飲みに行ったの」


「“魔法の水?”って何ですか?」


 ボクは、ここで暮らすようになって初めて聞くものだった。



「実はね、アルは最近私と魔法の稽古をしているの……でもなかなかうまくいかないのよね」


「え!そんな稽古をしていたんですか?……」


 ボクは、びっくりしたけど、もっと気になったのは、その魔法の稽古のことをボクに教えてくれなかったことだ。とてもショックだった。

 ボクは、もう必要ないのだろうか?


 なんだか寂しい気持ちになった。



「タロウ先生、ごめんなさいね。

 でもね、気にしないで頂戴……。

 魔法の稽古は、タロウ先生の為だと思うの。

 …………アルもね、詳しいことは私にも言わないの…………。

 でもね、アルはとってもタロウ先生が大切なのよ。だから魔法の稽古を一生懸命にやっているの」


 そんなハーティの優しい言葉で、ボクは少し安心することができた。


「なんだかよく分かりませんが、ボクはアルを信じます…………ところで、魔法の稽古と洞窟って、何か関係があるんですか?」




「あの洞窟は、エルフの言い伝えで、“魔法の泉”と呼ばれているの。

 その水を飲むと、魔法の力が増すと言われていたわ。

 …………実は、昨日、この話をあの子にしてしまったのよ」


「そっか、それでその“魔法の泉”を探しに行ったんですね」


「多分そうだと思うの…………それで、タロウ先生、お願いが……」





「ハーティさん、分かっています。ボクは、後を追い駆けて、彼女を守って見せます。ただし、影に隠れながら、見つからないように気を付けますから」


「ホント、タロウ先生は、あの子のことをよく分かってくれていて、嬉しいわ。……でも、決して無理はしないでね。危なくなったら、すぐに逃げるのよ」



「はい、分かっています。その時は、命に代えてアルを守りますから」


「ううん、タロウ先生だって、絶対危ないことはしないでね。あなたにもしものことがあれば、アルティシアが悲しむんだからね。もちろん、私とジョンディアもよ」





「はい、ありがとうございます。では、早速後を追います」


「気を付けてね!」



(つづく)


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