第60話 アルティシアの願い
「アル?今日も行くのかい?」
「うん、センセ!……いつもの奴だから、センセは来なくても大丈夫よ!」
「じゃあ、気を付けてな。何かあったら、すぐ呼ぶんだぞ!」
「はーい、わかってまーーす!」
“ヤミュー”を使って魔鳥ロプロテスを倒したアルは、前よりも一層稽古に励んでいるんだ。どうして、そんなに一生懸命なのかよく分からないが、毎日のように剣とヤミューを持って、近くの森で練習をしているんだ。
この森は、アルが魔獣を倒しすぎて、もう1匹も出やしない。だから、アルは木に目掛けてヤミューを放ったり、木の枝を剣の相手と見たりして稽古をしていた。
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「……センセ、ただいまーー」
暫くしてアルが帰ってきたが、また、いつものように、全身傷だらけになっている。傷といっても掠り傷程度で、大したことはないが、どうしてこんな傷が付くのか聞いても、あまり要領を得ない答えばかりなんだ。
「傷だらけだね。今日は、どうしたんだい?」
「う、ううん……木の枝がね……いっぱいあったの!…………だからね、引っ掻いちゃった!えへっ (= ̄ω ̄=)」
「そうか?……まあ、そのくらいの傷なら、ハーティさんがすぐ直してくれるから、早く見てもらったらいいよ (⊙_⊙)?」
もちろん、ボクも一緒に森へ行くと言ったんだけど、アルは一人で行きたいと言い張った。
ロプロテスの時もそうだったんだけど、肝心なところでボクが手を出してしまうから、アルは少し自信を無くしてしまったのかとも考え、今はアルに任せている。
気が済むまで、思い通りにした方が、アルのためだとボクは考えたんだ。
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「お母様、また、お願いしてもいいかしら?」
「もちろんよ!アル…………じゃあ、ここに座って、左手を出してご覧なさい」
「はい、お母様…………」
「あなたも右手を翳して…………そう、それでいいわ…………ゆっくり心の中で願うの…………ゆっくりでいいわ…………」
「はい、お母様…………」
「…………どうお?……何か感じた?」
「ううん、ダメ…………左手はとても暖かい感じがするの……でも、右手は何も感じない……」
「大丈夫よ……その左手の暖かさを覚えておいてね……きっとそのうちに
………………頑張るんでしょ?」
「はい、あたし絶対やってみせます!だって、あたしは、お母様の子なんだもの!」
ボクは、てっきりアルが切り傷をハーティに直してもらっているとずーっと思っていた。
(つづく)
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