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第48話 魔鳥の予感

 ボクは、アルに担がれながら改めて彼女の成長を感じた。


 初めて出会った頃に比べてそんなに外見は変化していない……と、思う。

髪の毛は、少し長く伸びた……ような気がする。

 ツインテールのシルバーグレーは、二つの髪球を頭に載せていて、少し子供っぽさを感じさせる。


 髪の毛の手入れは、母親のハーティが行っているが、髪質はそっくりだ。ただ、ハーティの髪は、そんなに長くはなく、ポニーテールにしてはいるが、シッポはとても短い。




 アルは、剣の稽古や森へ入る時は、アーマードプロテクトを身につけている。アーマードプロテクトと言っても、簡単な急所を防御するもので、薄い素材を加工してできるだけ普段着ている服の上から装着できるようになっている。


 守る部分は、胸や腰、肘や膝だけある。


 ただし、このアーマードプロテクトには、ハーティが防御魔法を掛けてくれたので、少々の攻撃なら防いでくれる。



 アーマードプロテクトの下は、いたって15歳の少女が着る服だ。とは言っても、ボクの世界とは少し違っていて、夏は短パンに半袖のシャツぐらいである。冬は、それが長ズボンと長袖になるくらいだ。

 特に飾りがあるとか、模様があるとかはない。


 だからアルくらいの女の子が、何の文句も言わず与えられた服を着ていることに、ボクは少し違和感を覚えた。できれば、もう少し可愛い服を着せてあげたいと考えてみたが、服を手に入れる方法は、ボクにはなかった。


 服は、ハーティの手作りだ。多分、魔法で作ってくれているとは思うが、作っているところは見たことがない。なにぶん、ボクの服も作ってくれているのである。

 もちろん、変わったものではなく、こちらの世界の人(と、言ってもボクはアルの家族やジルの家族ぐらいしか知らないが…)と同じような長ズボンに長袖のシャツだ。




 そんな服装のアルティシアだが、こんなにも颯爽とボクを担いで走れるなんで、思いもしなかった。

 そう思って見ると、顔つきは少し大人びて来たかも知れない。いや、顔だけではない。ボクは、腰を彼女の肩に載せ、上半身は彼女の胸に覆いかぶさっている。


 改めて見ると、彼女も一人前になってきているようだ。ボクは、気まずくて顔を前に向けるために、上半身を少し起こした。



「アル!止まれ!止まるんだ!!」


 ボクは、慌てってアルに告げた。目の前は、もうすぐ湖になっている。……しかし、その湖の辺りの様子がおかしいのだ!


「アル!前に何か見えるか?」


「うーん?あたしには、湖しか見えないよ!」




「そうか…………それでも、あそこは危険だ。ボクを降ろしてくれ」


 ボクの目には、森を抜け湖の畔一帯が、赤みを帯びた靄で覆われて見えている。



「よし……ゆっくり、湖に近づこう。大きな木の陰に隠れながら行くぞ!」


「うん、分かったよセンセ!」




 よーし、もうすぐ湖の岸辺だ。木も無くなって、見通しも良くなるぞ!




ヒューーーーウ……ヒューーーウ……ヒューーーウ……




 ん、また、あの音だ!なんだいったい?ボクは、ドキドキしながら、アルの手を引き、一緒に前に進んだ。



「あ!センセ、あれ!」


 急にアルは、木の途切れた辺りから、上空を指さして叫んだ!


 湖の岸から湖面の上空に掛けて、大きな鳥が奇妙な声を出しながら、旋回しているのが見えた。



「な、なんだ?あれは……」


「センセ、きっとあれは、魔鳥ロプロテスだよ!」


「魔鳥だって?……ということは、魔獣なのか?」


「多分ね、あたしも名前しか聞いたことないけど、空の魔獣よ!」




 そう言えば、ジョンディアが言っていたな。昔、あのエルフの村を襲ったのも、スウィーソドランゴンという空を飛ぶ魔獣だったって。



「アル、あの魔鳥ロプロテスっていうのは、どのくらい強いんだ?」


「あたしには、分かんないよ~……でもね、お父様はロプロテスには攻撃できないって言ってたよ」


「え?あのジョンディアさんが、攻撃できない?……なぜだ、あんなに強いのに!」




「だって、ロプロテスは空から攻撃してくるんだって。でも、お父様の剣は、空には届かないから攻撃の仕様がないって言ってたわ!」



「そっかーー……」



 ボクは、森の木の陰から湖の方に体を少し出して、上空のロプロテスを見上げた。


 すると、ロプロテスの口が大きく開き、口元が真っ赤に光輝いた。ボクは、慌ててアルの手を引いて、森の中へ逃げた。



 シューーーウーー……ドッカーーーン……バリバリバリ……ゴオオオオオ……




 目の前の木々が音と立てて破壊され、燃えだした。


「センセ、センセ……いったいどうしたの?何があったの?」


「わ、わ、わからん!……ただ、何か、赤いものが降って来たぞ!……まただ……逃げるぞ!」




シューーーウーー……ドッカーーーン……バリバリバリ……ゴオオオオオ……



 ボク達は、慌てて森の奥の方に隠れた。どうやら、魔鳥ロプロテスの口から炎の塊が飛んできたようだった。上空から、ボク達の陰でも見て、攻撃してきたんだろう。

 森の奥へ行くと、大きな木が多くてボク達を見失ったようで、攻撃は止んだ。



「おいおい、何も考えず、湖の畔に顔を出していたら、今頃あの火炎弾を食らって、真っ黒焦げになっていたぞ」


「良かった!センセには、また見えたの?でも、魔鳥は空だったわよね、湖の畔には、何も居なかったのに?」




「そうだね…………どうも、危険な場所も見えるのかな?あそこへ行けば、危険があるって、教えてくれたようだ……」


「すごいわ!センセ!」


 アルは、嬉しそうに、またボクにしがみ付いて笑っている。


「アル?……怖くないのかい?」


 そんなアルを見て、思わず聞いてしまった。


「え?あたし、平気よ!……だって、タロウセンセと一緒なんだもん!」





(つづく)


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