表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/227

第44話 不確定遭遇

 午前中の稽古を終えたボク達は、湖の近くでお弁当を広げていた。今日は、畑仕事もお休みということで、ジルとメルが一緒だった。

 いつもは、お昼は家に帰るのだけど、今日はハーティが気を利かせて、お弁当を作ってくれた。

 天気もいいので、少し遊んで来たらいいよという意味だとボクは思い、感謝した。


 もちろんアルも大喜びで、母親に抱き着いてお礼を言っていた。



「センセ、早く、早く……センセは、ここね!」


 アルは、いつも自分の横をボクの指定席にするんだ。


「うわあー美味しそうだなあ~」

「ボク、おばさんの料理が大好きなんだ!」


 ジルもメルも、お弁当を見て大はしゃぎした。


「あのね、お母さんが、これ持って行けって……」


「すごい、もう成ってるの?ジル君のところの畑は最高ね!あたし、これ大好きなの!ありがと!」




 ジルが、持って来たのは、赤い円錐形の実だった。実には緑の葉がついているので、これは一つ一つの実を手で摘んだことが分かった。

 赤い色が濃い物の方が甘いんだそうだが、ジルの持って来た実は、すべてが真っ赤だった。柔らかく、どことなく酸味もあったが、しっとりした甘みの方が勝っていて、とても後味が良かった。





「センセ知ってる?これに、“ロベリースト”って言うのよ!美味しでしょ!……うわっ、うふっ!」


 アルは、一口食べて、喜びの声をあげた。



「お母様はね、これでジャムを作るのよ。とっても甘くて、美味しいの!」



 そう言えば、前に食事の時、パンに塗って食べたものだ。あの時は、ボクの世界と同じなんだと感心したことを覚えている。

 そうか、やっぱり材料は、『いちご』と同じ味がするんだ!





 そんな懐かしい味を楽しんでいたのに、突然小鳥が一斉に湖の傍にある林から飛び立っていった。ものすごい数の鳥達だったので、羽音がけたたましく、湖の水面が波紋で乱れてしまった。


 それまで、風も無く波一つ立っていなかったのに、怪しい雰囲気が周りの景色を一変させたような気がした。




「あ!あれだよ、あそこを見て!」


 ジルが、少し離れた林の方を指さした。ちょうど、林と草原の境目に、何やら黒い塊が見えていた。



「何?あれ?……あの黒い塊は?」


 ベルも知らないらしい。もちろん、ボクなんかは、知る由もない。



「オレ、知ってるぞ!……前に母さんから聞いたことがある。昔は、よくこの辺を暴れ回って、家畜や農作物を食べたって!……魔獣の“ヒマグー”だよ!」


 ジルが、“ヒマグー”と呼んだそれは、全身に真っ黒の毛が生えていて、四つ足でこちらに近寄って来ている。

体の大きさは、人の2倍くらいに見えるが、手や足(4本とも足かもしれないが?)は、異常に太い。


「センセ、どうしよ?……戦う?」


 そう聞いてきたアルの目は、もうやる気満々だった。




(つづく)


 ありがとうございます。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ