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第43話 仲間

 アルは、誕生日の後も、変わらずに魔獣退治の稽古を続けた。


 畑の仕事が無い時は、ジル兄弟も稽古に参加するようになった。


「アル姉ちゃん、ボクね~だいぶ上手くなったんだよ」


「そうね、メル!あなたは、物を上手に投げることができるわね……次は、これを投げて、あの木にぶら下がっている的に当ててご覧なさい」



 ジルの弟、メルは10歳の男の子だった。背は、ボクの半分ぐらいでまん丸い目をキラキラさせて楽しそうに、石を的にめがけて投げ込んでいる。

 的は、ボクが作った。石が当たれば、半分に割れるように細工してあるが、まだ1度も割れたことはない。



 ボクは、このメル少年が投げやすいコマを木で作っている。

子どもの掌サイズの薄い板を星形に切り抜くんだ。真ん中には、湖の浅いところにたくさんある親指サイズの貝殻を埋め込んでいる。

 

 この貝殻は、見た目より重くて、メル少年の投げるコマには、ちょうどよい重りになっている。

 これが、たくさんあれば武器としても役立つのではないかと思っているが、数をたくさん作らねばならないので、完成はもう少し先になりそうだ。







 そう言えば、幼稚園でもよく的当てゲームをしたよな~あの時は、段ボール紙を張り合わせて“手裏剣”を作ったんだったなあ~

 





「センセ!……また、ナニ作ってんの?」


 木を削っているボクの後ろから、アルが頭を差し込んで肩口から覗いて来た。


「ん?あ~これな。これは、メルの武器になる……“シュリケン”だ」


「“シュリケン?”って、なあに?」


 初めて聞く言葉に、アルは興味をそそられたみたいで、ボクに覆いかぶさって手元を覗き込んできた。


「ア、アル……ちょと重いよ~」

「あ!センセ!あたしそんなに重くないよ!」

「いやいや、頭の上から圧し掛かられると、ボクが潰れちゃうよ~」




「もーやーね~センセったらーー!」

と、言って今度は、前に回って手元をさらに覗き込んで来た。



「ところで、ジル君のブーメラン操作は、上手くなったかい?」


 魔獣を探しに森へ行かない時は、アルティシアがジルの面倒をみている。ジル少年も、アルの誕生日に『この村を賑やかにしたい』と宣言したので、少しでも強くなった方がいいだろうと、ボクがアルの稽古に誘ったのだ。


 お陰で、稽古の仲間が出来て、アルも大そう喜んだ。そして、自分からジルにブーメランを教えるんだと張り切っているのだ。



「それが、凄いのよ!もう、自分で投げたブーメランを自分のところに戻せるようになったの………練習し始めてまだ1週間も経っていないのよ!」


 アルは、自分のことのように、嬉しそうに話してくれた。



「ねえ、タロウセンセ!あたしにも、何か新しい武器を作ってよ~ねえ~」


 いつもボクの指定席は、大木の根元だ。そこに胡坐をかいて座っているんだけど、アルはその胡坐の中に正座をしてボクの顔を下から見上げながら、おねだりしてきた。



「ん?アルは、立派な剣を持っているじゃないか?……それに、ブーメランだって使えるし……」


「えええーー(◔◡◔)……剣じゃ離れたところは攻撃できないのよ~、それにブーメランはジル君の方が上手そうだし……あたし専用のが欲しいよ~!」


 アルが、ボクの膝の上で少し駄々をこねだした。






 ボクは、アルのこういう姿を見るたびに、幼稚園の子ども達のことを思い出す。あの子達もよく駄々をこねていたっけな~







「あーあ、分かったよアル。少し考えておくからさ……ほら、ジル君が呼んでるよ」


 ボクは、幼稚園の子どもをあやす様にアルの頭を一撫でして、約束をした。



「やったー!センセ、お願いよ!」


 笑顔で喜んだアルは、ボクの膝から飛び上がって、またジル少年のところへ掛けて行った。


(つづく)


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