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第4話 偶然の悪戯

「タロウセンセ、どう?気持ちいいでしょ!ここは、一面の草原で風通しもいいのよ」


 ボクは、体力の回復のため、表に出て散歩をしていた。外を歩けるようになって3日目だ。軽くなら走ることもできるようになってきた。

 アルティシアは、いつもボクに付き合ってくれる。


 朗らかで、笑顔を絶やさない優しい子にボクの気持ちも和らいでいた。



「ねえ、アルティシアさん?どうして、君はそんなにボクの面倒をみてくれるんだい?」



 何でも一人でできるようになったのに、未だに彼女はボクに付きっきりだった。普通だったら、彼女くらいの歳の子は、こんな見ず知らずの男などには構わず、いつもの自分の生活をするようになってもおかしくは無いと思えたのだ。



「本当に、ごめんなさい。…………あたしのために…………」


 彼女の顔から笑みが消え、俯いてしまった。




「あ、いや……ボクは、君を責めている訳じゃないんだ……ただ、ボクはよく分からないんだよ…………できれば、あの時のことを教えてくれないだろうか?」



 ボクは、突然この世界に来た時のことを知りたいと思っていた。

 しかし、一生懸命に世話をしてくれる人達を見ていると、どうしても聞けなかったのだ。


 もし、アルティシアがいつまでもボクの世話をしているのが、その時のことが原因だとすれば、早く彼女を解放してあげたいと考えていた。

 その為にも、ボクは、知りたいと思ったのだ。




 アルティシアは、意を決したように、静かに話し始めた。


「……あの日、あたしはいつものようにお父様と剣の稽古をしていたんです。稽古は厳しくいつもあたしは、コテンパンにやられます。


 あの時も、稽古が終わったらスッキリした気持ちになり、つい馬に乗ってしまったの。

 あたしは、乗馬も得意なの。

 普通だったら、少々の暴れ馬でも乗りこなせるのよ。


 ところが、あの時は疲れていたのかもしれないわ…………馬が走り出したら、急に眠くなって気絶してしまったの。


 慌ててお父様が追いかけたけど、間に合うはずもなく、今にも馬が崖ら飛び出しそうになっていた時、センセが馬に跨っていたそうよ。

 あたしは気を失っていたから、何も分からないの。

 お父様に聞くと、『それでも馬は止まらなかった』と言っていたわ。


 そこで、崖を目の前にして、センセはあたしを庇いながら馬から転げ落ちたそうよ。


 馬は、そのまま崖の下へ転げ落ち死んでしまったわ。


 でも、あたしは助かったの。センセのお陰よ。


 …………ただし、センセは大怪我をしてしまったの…………全部、あたしのせいなの。本当にごめんなさい……」





 彼女は、目にいっぱい涙を溜めていた。


(つづく)

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