第36話 渾身の魔法
「ウリャリャリャリャーーーーーーーーー!」
瞬く間にアルは、ウルファ―に近づき、首を目掛けて剣を振った!
ウギャアアアアアアアアアアアーーーーーーー
悲鳴にも似たウルファ―の声が、まだ何も生えていない一面の畑に木霊した。
そして、みるみるウルファ―の体は、粉々に粉砕して消えてしまった。
「ベル~、大丈夫か~」
「だ、大丈夫よ!タロウセンセ!……ありがとう、ブーメラン!」
「いや、あれは…………ハーティさんが…………」
「お母様が?」
アルは、ウルファ―を倒したその場所にへたり込んで座ってしまったが、怪我もなく大丈夫だった。
やがて、みんなが集まって来た。
「アル!……お前凄いな!びっくりしたぞ!」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
ミルとメルは、目を丸くして驚き、アルにお礼を言った。
「アルちゃん、強くなったんだね!凄いよ。小さい頃から、お父さんとよく剣の稽古をしていたのは知ってたけど、本当に助けてくれてありがとう!」
ミル達の母親も大そう喜んでくれた。
「アル、良かったわね!……ユキ球だけじゃなく、ブーメランにも魔法が効いたわよ!」
「え?そういう事なの?……あたしの魔法?……本当?」
「うん、そうだよ、アル!良かったね!」
ボクがそう言った途端に、アルは目にいっぱい涙を溜めながら、笑顔で抱き付いて来た。
「……センセ、センセ……ありがと!
……ウワアアアアアアーーン……ウワアァアアアァアーーん!……………」
「アル?勝ったのに、どうして泣くんだい?……泣かなくてもいいんだよ!」
「……ウワアアァァァァァーーーン!
…………だって、だって……こんなにたくさんの人…………守らなきゃって…………あたし…………あたし………
………………………………ガンバッタ?」
「あああ、よく、頑張ったよ!アル!」
ボクは、静かにアルの頭を撫でてあげた。
(つづく)
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