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第32話 誇りの魔法

「アル!おめでとう!……とうとうやったわね。あなた、魔法が使えるようになったのよ!」


 ハーティは、思いっきりアルティシアを抱きしめて嬉しそうに頬擦りしていた。当のアルは、意味が分からずしばらく呆然とするのだった。




「え?あの……お母様?どういうことですか?」


 キョトンとした顔で、自分に抱き着いている母親を見ながら、アルは不思議そうに尋ねた。




「良かったじゃないか!アル!」


 父親のジョンディアも、傍に来てアルティシアの頭を撫でた。




 以前からボクは、不思議に思っていたことがあった。


 14歳のアルがどうしてあんなに剣捌きが上手なのか?それだけでは無く、相手の攻撃を躱したり、防いだりできるのか?




 確かに、小さい頃から剣の稽古を父親とやっていた事や剣の達人だった父親の教え方が上手だった事などもあるかもしれない。


 でも、多分に母親ハーティから受け継いだエルフの特性というのが、あるんじゃないかと考えていた。

例え、ハーフエルフだったとしても、アルの真っすぐに己をエルフだと誇れる心情は、何よりも強いような気がしていた。




「アル!やっぱり君は、エルフなんだよ!

 その素晴らしい才能は、しっかりハーティさんから受け継いでいると思うよ…………そうなんですよね、ハーティさん!」




 ボクは、嬉しかった。


 アルが、魔法を使えて強いからではなく、魔法を使えるということがアルの誇りを確かなものにすることができたからだ。





「そうよ、アル。よくお聞きなさい。

 私は、エルフで魔法が使えるの。


 ……いいえ、使えたの。


 ……でもね、私が魔法を使う目的は、たった一つだけだったわ。それは、仲間を守るためなの。

 だから、私のヒール魔法は、強大な力を持っていたけど、決して戦いのために使ったことはないわ。そして、この物を動かす魔法も、実はヒール魔法なの」





 ハーティは、静かに話した。どこか、エルフの誇りを伝えるような感じに、ボクには聞こえた。




「私は、土を固めて動かすことができるの。

 それは、本来土が持っている自然の力である“大地のめぐみ”を癒しているの。大地は、私達エルフだけではなく、すべての生きるものの“めぐみ”なの。

 大地があるから、すべての生命は生きていけるのよ。


 私は、この魔法で大地から少しだけ力を借りて、作物の栽培を手伝ったり、畑を荒らす者から守ってきたこともあったわ。私なりの“誰かを助けたい”という想いね。

 …………アル、きっとあなたも誰かを助けたいと想ったのなら、私と同じ魔法が使えるはずよ」



「そうなんですか?お母様?」



「良かったな~アル!」


「嬉しいよ、アル。これからは、魔法の稽古もするんだぞ!」




 ジョンディアは、何か安心したようにも思える安堵の表情を浮かべ、再びアルティシアの頭を撫でた。




「まあ、魔法が使えるといっても…………さっきのは、本当に赤ちゃんみたいなものだから、これからしっかり頑張ってね!」




 ハーティは、娘に『頑張って』と、いう割に、笑顔をボクに向けて、ウィンクして来た?


 え?頑張るのは、ボク?……え?どうすれば…………




(つづく)


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