第30話 開幕?雪祭り!?
「ぷっぷー……あれ??……センセ、何を驚いているの?」
目が合ったアルは、笑いを抑えられないように、吹き出しながらカラかってきた。
「え?え?ハーティさん、何を動かすんですか?」
「ぷっぷー……タロウ先生?……もちろんあなたが作った“セツゾウ”ですわよ!」
ハーティも、笑いを抑えながら、そう言った。
「こらこら、お前達、タロウ先生は知らないんだよ……それを笑っちゃ失礼だぞ……ぷっぷー」
あーもう、ジョンディアも笑ってる!どういう事?
「あーはいはい、タロウ先生、ごめんなさいね。
私が土を固めた人形を魔法動かせることは、この辺に住んでいる人はみんな知っているのよ。時々、その人形を作って、畑仕事を手伝っているの」
ハーティは、笑いを我慢しながら教えてくれた。
「でもねセンセ、お母様の魔法は、固まりやすい土だと人形にしやすいのだけど、“ユキ”はパサパサで上手く人形にはならないよの。
去年、“ユキ”が降った時、試したけどダメだったの」
アルが、少し困った顔をして教えてくれた。
「なんだ、そういう事ですか。じゃあ、今回は、ボクがこの“スヘール”で、大きな人形を作って見せますから、ハーティさんはそれを動かして見せてくださいね」
「いいわよ……じゃあ、今度、スヘールが止んだ時に、みんなでやりましょ」
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そんな話をして、3日が過ぎた頃、雪も止み雲もなく、眩しい太陽が照り付ける絶好の雪像日和になった。
「じゃ、雪像を作るから、アルも手伝っておくれ!」
「いいわよ、何でも言って」
久しぶりの外で、思いっきり体を動かせるのはとても気持ちがいい。
雪は冷たいが、そんなこと気にもせず、アルは防寒のズボンと長袖のコートを羽織り、温かい毛皮の帽子と手袋を身に付け、ボクが教えた通り雪を掻き集めてくれた。
「アル、大きな人型の雪像を作るぞ!」
ボクは、そう言って雪と水を混ぜ合わせ、固まりやすくするために湿った雪の塊をたくさん作った。
ボクは、人の背の2倍もある大きな“ロボット”を作り始めた。昔、夢中になったロボットだ。
でも、アル達に、“ロボット”と言っても、分からないだろうから、“大きな人型の人形”としか言ってないが……。
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「よし、できたぞ!」
「すっごいよ!センセ!……やっぱり、“魔人ブロッケン”だよ!」
アルは、目をキラキラさせて、雪像を見て喜んだ。
大きな胴体を太い二本の足が支え、少し細い腕が両脇から飛び出している。顔は、鼻が高くて、目は四角い。
口の周りは、格子状の鎧が塞いでいて、頭には王冠のような兜が乗っかっているのだ。
おまけに、胸には2枚の羽根が付いて居る。
そこにハーティがやって来て、うっとりと眺めて呟いた。
「本当に、これは動かないの?……もったいないわ……こんなに良くできているのに」
「いやあ、そんなに褒められても……ただの雪像ですし」
ボクも昔は、地元の雪まつりで、よく家族で雪像を作っていたことを思い出した。
「じゃあ、魔法を掛けるから、みんな少し離れていてね……………………」
ハーティが、呪文を唱えると、雪像のロボットは、表面の雪がほんのり鉛色に変色した。わああ、これはロボットの色だ。本物のロボットになっているんだ。
最初は、ゆっくりだったが、次第に二足歩行もスムーズに行い、庭中を縦横無尽に駆け出していた。
「すごいわ!これ、土なんかより、よっぽど軽いからとっても動かしやすいわ~」
ハーティも嬉しそうに魔法で雪像を操った。
(つづく)
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