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第29話 雪の思い出

「アル、今日も、ダメだな……」


「センセ、やっぱり“ユキ”は、止まないわね……」




 収穫の季節も終わり、周りの畑から作物が消え、森の木の葉も枯れだしてきた頃、身に染みる冷たい風は、真っ白い雪を運んで来た。


 アル達の世界では、これを“スヘール”と、言うんだそうだ。




 でも、北国育ちのボクにとって、この白いきれいな空からの贈り物は、“雪”という言葉でしか感じられない。


 アルは、よくボクの国の言葉を教えて欲しいとせがむんだ。

 アルは、ボクを他の国から来た人だと思ってくれている。例え、異世界から来たと言ったところで、信じてはもらえそうもないので、ボクは嘘をついている。



 それでも、アルは、ボクの小さい頃のことを良く聞きたがるんだ。

 ボクは、あまりにもこの世界と異なることは言わないようにして、自然と遊んだことや田舎のおじいちゃんのところで見たことなどを少しずつ話すようにしている。



 そんな中、アルはこの“ユキ”という言葉を大そう気に入って、自分でも使ったりしている。




 風が吹き、人の背丈ほども雪が積もっている窓の外を見ながら、ボクは昔のことを思い出していた。


「なあ、アル……今度、雪が止んで空が晴れたら、雪像でも作ろうか」


 昔、地域の雪まつりで、ボクは家族とよく雪像(せつぞう)を作っていたことを思い出した。






「センセ、“セツゾウ”って何?」


 アルは、不思議そうに“セツゾウ”という言葉を繰り返していた。





「うーん…………雪像っていうのは、雪で大きな人型(ひとがた)を作ったり、建物を作ったりすることだよ」


「へー、そんなことができるんだ…………まるで『魔人ブロッケン』だね……あははは」


 アルが、自分で言って笑い出した。




「おいおい、『魔人ブロッケン』とは、物騒だな……それなら『ツミッキ―』ぐらいにしておいてくれよ。それくらいなら幾ら動きまわっても大丈夫だから」


と、近くで聞いていたジョンディアが、同じように笑顔で話して来た。


 

 

「大丈夫ですよ、ボクが作る雪像は、絶対に動いたりしませんから!」

 ボクは、少し真面目に答えてしまった。




「え?センセ…………“セツゾウ”って、動かないの?」

 なぜか、ガッカリするようなベルだったが、ハーティが笑顔で提案してきた。






「じゃあ、その“セツゾウ”を、私が動かしてあげましょうか?」


 ボクは、びっくりしてアルと目が合ってしまった。





(つづく)


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