第28話 16歳の儀式
「なあ、アル。ちょっと先の話なんだけど、16歳になったら、何があるんだ?」
凛々しい表情になったアルは、歩みはゆっくりと、でもボクの方をしっかりと見ながら、答えてくれた。
「センセ、あたしはエルフなの!…………みんなは、“ハーフエルフ”だからって、いろいろ気を使ってくれるわ。
あたしが、魔法を使えなくても“ハーフエルフ”だから、大丈夫って言ってくれるの」
そうか…………ボクも言われたなぁー。……“山口先生は、男の先生だから”って。小さい子どもは、男の先生には懐くけど、困った時は必ず女の先生の所に行くものだって。
「でもね、あたしは、自分では“エルフ”だって、思ってるの。
お母様の“エルフ”としての誇りを引き継ぎたいの。
お父様だって、“エルフ”のお母様を好きになったの。
だから、両親は、あたしが“エルフ”として、生きることに反対はしないわ」
「そうだね……君の両親は、素敵な人達だよ。
“エルフ”だとか、“人”だとか、そんなのは関係ないんだ。
周りの村の人達の面倒をみている2人からは、一人一人を大事に、その人の気持ちを大事にしていることが、よく伝わるよ」
「ありがとう、センセ…………エルフはね、長寿なの。見た目はいつまでも若いままだからいつ大人になったか分からいのよ。
だから“子ども”として生きるのは、16歳までという言い習わしがあるの。
16歳になったら、自分で自分の生き方を決め、独り立ちするの。そうすれば、親になったエルフも、また新しい人生が歩めるという訳なの」
まあ、ボクの世界の“成人”と同じようなことかな。親離れ子離れとでも、言うのかな…………それにしても、エルフ達は、そうやって歴史を作ってきたんだなあ。
「でもね、あたしはまだ決めてはいないの。どうやって生きて行くか。何をするのか。
……ううん、やりたいことはたくさんあるの、でも、まだ、どれにするか迷っているのよ」
「そっか……でも、まだ1年以上あるんだ、ゆっくり考えればいいよ。ボクにできることがあったら、何でも協力するから」
「ホント!あたしは、一所懸命がんばるから、傍に居てくださいね!きっとよ!」
また、14歳のアルティシアに戻り、笑顔が溢れだした。
(つづく)
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