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第27話 修練

「アル~、こっちだ!……この大木の根元!」








「センセ!分かったわ!……今、行くよ!」



 剣を構えながら、突進してくるラビッシュを左右にかわしながら、こちらに走ってくるのは、ボクの教え子のアルティシアだ。

 彼女は、もうすぐ15歳になる女の子で、ハーフエルフなんだ。


 彼女は、ハーフエルフなのに、魔法が使えない。いや、きっと今は使えないだけかもしれない。だって、彼女の母親のハーティは、優秀なヒーラーだったんだから。

 

 そんな彼女がめざしているのは、剣の使い手だ。父親のジョンディアに、小さい頃から憧れ稽古をつけてもらっていた。

 今では、父親も凌ぐ腕前なんだが、如何せん実践経験が乏しい。




 それで、この間からアルティシア…………〔家族のみんなや親しい人は、アルと呼んでいる。ボクも親しみを込めてアルと呼んでいるが、彼女は家族と同じだと言ってくれる〕…………と、ボクは、近くの森で魔物と実際に戦いながら経験を積むことにした。



「そりゃあああああーーー………………エイッ!」


 アルは、ラビッシュが湧き出す穴めがけて、高々とジャンプし、身を翻し空中で回転したまま、目標のラビッシュ発生卵を真上から剣で突き刺した。



 ≪……ビカッ!…………シュパパパパ~~ン…………ポン!≫



 穴の中のラビッシュ卵から放たれた眩いばかりの光は、今発生しているすべてのラビッシュに降り注ぎ、あっという間に消し去ってしまった。



「センセ!終わったよ!…………今回は、新記録だよ!」



「ああ、卵に攻撃するまでの時間が早くなってきな、アル!すごいぞ。今日は、2個目の卵だけど、もう森の入り口あたりに卵は無くなったんじゃないかな?」


「そうね、最近は、幾ら探しても、なかなかラビッシュに会えないもんね!…………センセ、もっと奥の方へ行ってみる?」




 この森は、奥が深くどこまで続いているか、ここからでは見当もつかない。






 ただし、入り口付近は、村人もよく枯れ枝を拾いにくるなど大切な場所なんだ。

そのせいで、入り口付近だけは、村人も様子が分かっていて、危険な魔物は居ないと言われている。

 しかも、この森の魔物は、夜に活動することが多く、昼は大人しい。そして、森から外へは出ないと言われているんだ。






「そうだな~次からは、もう少し奥へ行ってみるとするか…………

 でも、今日は疲れているから、一旦家に帰ろう。今度来るときは、少し準備も考えないとな」



「うん、分かったよタロウセンセ!」


 いつも笑顔のアルは、今日も満面の笑顔を見せてくれた。





 この森の入り口で稽古を行う様になって、一月あまりになる。

ラビッシュに関してなら負ける気がしない。アルの体力も増し、剣の動きにも無駄が無くなってきた。

 最近では、ボクが木に登り、ラビッシュの発生場所を見つけさえすれば、すぐにアルが仕留めてくれるようになった。




 あまり疲労も感じないまま、帰り路もゆっくりになって、周りの景色を楽しむ余裕もあった。


「なあ、アル?……昨日、ハーティさんが言っていたんだが、もうすぐ雪が降るらしいな?」


「“ユキ”?……って、何?」


「ああー、……ここでは、“スヘール”だったかな?」


「スヘールね!……そうヨ~、あたり一面真っ白になるの。……でも3ヶ月ぐらいしたら、あっという間に溶けてなくなるの。その後は、また暖かくなっていくのよ」







「そーか…………その暖かくなったら、庭のチェラシ―の木に花が咲くんだろ?」


「あれ?センセ、よく知ってるね!……チェラシ―の花が咲くとね、あたしの誕生日なの。15歳になるのよ!」






「なあ、アル。ちょっと先の話なんだけど、16歳になったら、何があるんだ?」


 ボクは、笑顔のアルに向かって、今ならそれを聞けそうな気がして、話してしまった。




 すると、アルの表情から笑顔が消え、瞳の奥に光が増し、何かを決意するような凛々しい顔つきになった。





(つづく)


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