第26話 戦いの後で
ボク達が家に帰る頃には、もう日が沈みかけていた。お昼前には家を出たはずなので、半日以上は森の中を戦いながら彷徨っていたことになる。
「アル、お腹がすいたろう?」
ボクの背中にいるお姫様は、疲れ果てて目も開かない感じになっている。
「……う、うん……ペコペコ……」
これだけ言うのも、大変そうだった。本当によく頑張ったと思う。
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「お帰りなさい!早速、晩ご飯ヨ、さあ、アル?起きなさい!」
出迎えてくれたハーティは、娘を起こして食卓に就かせた。
「お帰り、よく頑張ったなあ。タロウ先生、ありがとう!」
もう食卓に就いて、待ち構えていたジョンディアは、手放しで褒めてくれた。
きっと、父親と母親は、娘の無事を心から喜び、またその成長を感じているのだろう。それは、二人の笑顔を見れば、容易に推測ができた。
アルは、疲れと眠たさで朦朧としながらも、夕食を頬張っていた。いつもの美味しい夕食の香りもするが、ボク達にはそんな事より空腹を満たすだけで精一杯だった。
夕食を済ませると、アルはすぐに自分の部屋のベッドに潜り込んだ。
ボクは、少し落ち着いたので、ジョインディアと軽くお酒を飲みながら、今日の森での様子を報告していた。
疲れたせいもあったのか、この世界のお酒がこれほど美味しく感じたことは、今までにはなかった。
こちらの果物であるマスケットの粒を潰して、濃厚な汁を集め、それを暗い物置小屋に放置し熟成させたもの。ボクの世界のワインに似ているが、色は緑色で、液体は水よりも少し濃厚な感じがした。
ほろ酔い加減で、ジョンディアは何度もボクの戦い方を褒めてくれた。
「タロウ先生は、敵の様子をよく観察できるんだ!だから、作戦もうまくいく。もしこれが、自分勝手な作戦だったら、絶対に勝てないんだ。
どんな時も、戦いは相手に合わせた戦い方を考えないとな!」
ホクは、ブーメランのことも聞いてみた。
「それは、ハーティが言っていたじゃないか……ハーティの魔法は、武器を強くするんじゃないんだよ、武器を操る人の気持ちと武器を上手く繋ぐ役割をするだけなんだ」
「じゃあ、ボクの気持ちとブーメランが繋がったということですか?」
「多分そうなんじゃないか?
……あの時、タロウ先生は逃げたんじゃないんだ。
あれは、アルに敵が寄っていかないように自分が囮になったんだ。アルを助けたいという想いが、ブーメランに伝わったんだよ、きっとな」
ん?あれ?……ジョンディアは、楽しそうに教えてくれたけど、そういえばボクがどうやって敵の気を引いたとか、どんな作戦だったかとかは、まだ話してないんだ。
帰ってきた時も、ハーティやジョンディアは、アルや自分の心配はしていなかったなあ~。
最初から魔物をやっつけて帰ってくることが分かっていたような……。
…………あ!そうか!…………。
「ジョンディアさん!…………本当にありがとうございます!」
「ん?何がだい、タロウセンセ?」
「あ、いえ……いろいろご心配をお掛けして……」
「なーんにも、心配などしていないよ……二人で、好きなように頑張っておくれ。
……アルが…………16歳になるまでに決めればいいことなんだ………………」
ジョンディアが最後に呟いた16歳って、何のことだ?
アルが16歳になるには、あと1年以上ある。
アルの誕生日は、庭にあるチェラシ―の木に花が咲くころだと言っていた。これから冬になり雪が溶けるとチェラシ―の花の季節になるが…………。
16歳って、何があるんだろう?
(つづく)
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