第24話 敵を知る
「うわあああああああーーーーーーーーー!!!!!」
「センセ、立って!楯を構えてて、ラビッシュは、あたしがやっつけるから!」
「……う、う、うん……………」
ボクは、立ち上がり両足に力を入れて踏ん張った。そして、ハーティからもらった楯を体の前にして構えた。
なぜか、ボクの方に向かって来たラビッシュは、ほとんどが楯に引き付けれられるようにぶつかった。
ボク知っている小型犬ぐらいの大きさで、足はウサギの様な感じなのだが、顔はネズミの顔になっている。魔物らしく、目が鋭くて、前歯が凶器のようにも見える。
「……エイ!……ヤアー!……トゥ―!……ハッ!……」
ボクの横で、アルは剣を縦横に振り回し、楯にぶつかって動きが遅くなったラビッシュを片っ端から切り倒していった。
「ハア……センセ、……大丈夫?……ハアハア……」
「ボ、ボクは、大丈夫だ。楯が守ってくれている。……それより、アルは大丈夫か?」
「大丈夫よ!……やっぱりこの剣……ハアハア……いいわ!……木刀なんかより、数段切れ味がいいのよ!」
息を切らしながらも、アルはボクに笑顔を見せてくれた。
でも、ラビッシュは、一向に減る気配がない。アルが結構な数のラビッシュを倒しているはずなのに、少しも減ってこない。
ボクは、近くに隠れる場所がないか、楯の陰に隠れながら、周りを探した。
ラビッシュは、ボク達二人をめがけて突進してきている。楯にぶつからない奴やアルを素通りする奴は、しばらく向こうに走ってから木の陰に消えているようだ。
「アル、よくラビッシュを見るんだ!奴らは、一旦走り出すと真っすぐにしか進めないんだ!」
「そっか!……だから、横から回り込むラビッシュは居ないのね!だったら、こうだ……」
アルは、ボクの横を飛び出して、ジグザクにラビッシュに向かって走り出した。ラビッシュの視線上に一度立つと、奴らはアル目がけて走り出す。
そしたら、アルは素早く横移動をして、脇を通り過ぎるラビッシュの真横から剣を突き出すだけにした。
「いいぞ、アル!無暗に剣を振らなければ、それだけ体力の消耗も少なくて済むんだ!」
勝手にアルの横を通り過ぎるラビッシュが、自分から剣に飛び込んでいくようなものだ。
ボクは、その間にも楯を構えながらゆっくりとある方向を目指した。それは、森の少し奥にある、大きな木の根元だ。
その大木の根元からは、ラビッシュが次々に湧いて出て来ていた。あの、大木の根元にある穴を何とかしなければ、いつまでもラビッシュが減らないような気がした。
(つづく)
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