表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/227

第19話 危機一髪

「ウワアアアアアアアーーーーーー!」


 向かって来たフォクサーに、アルティシアは木の枝の剣を真っすぐに突き出した。


「ヒィーーヨーーーー」

と、遠吠えのような鳴き声を上げ、フォクサーは剣を右に避けた。お陰で、ボク達の脇をすり抜けて行ってくれた。



「また、来るわよ!」

 アルティシアは、声だけは勇ましく上げて迎え撃つ体制を整える。


 何てことだ。ボクは、一歩もここから動けないなんて!アルティシアの足で纏いじゃないか!どうしよう……必死に考えを巡らせるが、戦いの素人のボクには、何も思い浮かばない。

 その時、アルティシアを見ると、右足首を左手で押さえていた。


「どうした?アル?」


「大丈夫、掠り傷よ……それより、次の攻撃に備えないと……」



 気丈な事を言っているが、足首は痛そうだ。走って戦うのは難しいだろう。


「タメだ、アル、またフォクサーが向きを変えて、こちらを見ている……今度、向かって来られたら、防ぎきれないぞ!」



「分かってるわ!……でも…………」


 ど、どうしよう……ボクは戦いのプロじゃない……でも、遊びなら……遊びのことなら誰にも負けない…………そうだ!


「アル!…………………いいかい?やれるかい?」


「任せて、センセ!……あたし、絶対やれるから!」


「よし、フォクサーが走り始めたら、すぐ行くぞ!………………よし!今だ!」




 ボクがフォクサーの右側に向かって走り出した。フォクサーは、ボクを目がけて突っ込んで来た。

 そこで、ボクは、持っていたブーメランを振りかぶって、思いっきりフォクサー目掛けて投げ込んだ。ブーメランは、フォクサーの右からから回り込んで飛んで行ったので、自然にフォクサーは、左に避けた。


 そこに、一歩遅く左側から周り込むように移動してしていたアルティシアの目の前に、フォクサーが出くわす格好になったのである。


「……エイ!……とりゃぁぁぁーーーーー!!」


 彼女は、回り込んだフォクサーの頭頂部を木の枝の剣で、思いっきり打ちのめした。


 思った通り、よく鬼ごっこで捕まえる時の“誘導”攻撃で、敵をうまく動かす方法が上手くいった。





「ギャファン!……ウー…………」

と、妙な鳴き声をあげ、魔物フォクサーは、塵のように粉々に砕けて、消えてしまった。






「アル!やったなー!勝ったぞ!」


 そう声を掛けたボク向かって駆け寄って来たアルティシアは、いきなりしがみ付いて泣き出してしまった。


「わあぁぁぁぁーーーん………わあぁぁぁぁーーーん…………怖かったよ~……………」


「アル、アル、どうしたんだい。あんなに勇敢にしていたのに……強かったぞ!頼もしかったぞ……アル、もう大丈夫だから……」


「だって、だって……また、センセに、…………タロウセンセに辛い思いをさせたらどうしようかって…………絶対守らなきゃって…………怖かったよ~……わあぁぁぁぁぁ~ん…………………」



「…………そうか、分かったよ。でも、アルは、強かったぞ……ボクも大丈夫だし、心強かったんだぞ…………」


「ホント?……センセ、そう思ってくれたの?」


「ああ、そうだよ!大丈夫だ」


 ボクは、しっかりアルティシアを抱き締めた。そして、まだ震えている手をそっと包んで落ち着かせた。



(つづく)


 ありがとうございます。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。

 どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ