第2話 少女との出会い
ボクが目を覚ますと、ベッドの脇には少女が椅子に座ってこちらを見ていた。
「……アルバートセンセ!……ご、ごめんなさい……あたしのために……」
首を横に向けると、その少女を見ることができた。
「あ……その……ボクの名前は、アルバートじゃないんだけど…………」
それだけを言うと、首をもとに戻し、天井を見つめた。
〈どういう事だ?ボクはアルバートなのか?…………いや違う、ボクは山口太郎だ。ついさっきまで、幼稚園の広場で遊んでいたじゃないか?〉
そんなことを考えていると、少女が誰か人を連れて戻って来た。
「アルバート先生、お目覚めになりましたか?……わしは、このアルティシアの父親でジョンディア・キャンディスと申します……この度は娘をお助け下さり、誠に感謝します」
背の高い頑丈な体をした男は、にこやかにそう伝えた。
「……ボクは……ヤマグチタロウ……アルバートじゃありませんよ……」
「ね、お父様!アルバートセンセは、ご自分をお忘れになったのよ、きっと……」
「んんー。そうかもしれんな、こんな怪我をされたんだからなー」
〈いったいボクは、何をしたんだ?いや、ボクに何が起きたんだ?〉
「う……ん、きっとそのうちに思い出すだろうから、今は先生の言う通りにしてあげよう。家庭教師を紹介してくれた、圏境の町の友人には、わしから手紙を送っておこう」
「分かりましたわ、お父様……でもアルバートセンセには、このままあたしの家庭教師をお願いしてもいいわよね?」
「ああ、もちろんだとも。あんなに勇敢で、お前のことを想っているんだ、例え名前が思い出せなくても、お前には必要な方だとわしは思う!」
「ありがとうございます、お父様!」
(つづく)
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