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第15話 新しい遊び

「センセ~……何してるの?~」


 アルティシアは、いつものように剣の稽古を一人でやっていたが、飽きてしまったのか僕の所にやって来た。


「これか?……さっきこの木の枝が落ちていたので、ちょっと削っているんだ」


「ふーん、何か作るの?」


「あ、ああ。まあ、出来上がったら見せてやるよ……」




 ボクは、あまり手先が器用ではないのだけど、遊び道具だけはいつも自分で作っていた。小さい頃から、お店で売っている玩具(おもちゃ)を買うのではなく、身近なもので、遊べるものを作るのが好きだった。

 前に、アルティシアに釣竿を作ったけど、あんなのは朝飯前だった。



 今、ボクは、少し太い曲がった枝を削っている。


 ナイフは、ジョンディアが、護身用にとくれたものだ。どうせボクは、戦いには向かないので、ナイフなんか使い道がないと思っていた。

 でも、この辺りの木は、柔らかく加工がしやすいが、耐久性に優れ、丈夫なのである。この辺りの村の家は、みんなこの木を自分達で加工して作っている。



 試しにボクもナイフで削ってみたら、思いのほか自分の好きなように加工することができることが分かった。

 ボクは、この曲がった枝を両側から削り、平らな形にすることを思いついた。

 枝の曲がり具合を利用して、その角度に合わせて平らに削ってく。枝の曲がっている中心を支点として、そこから伸びた部分に(ひね)りの傾斜をつけて薄く削っていく。



「ねえ~センセ!できた~?」


 アルティシアは、不思議そうにボクの手元を覗きに来た。

たぶん、もう一人で剣の稽古をするのは詰らないんだろう。村の誰かと手合わせをしても、誰もアルティシアに叶う者はいない。叶うどころか、アルティシアが、強すぎて誰も一緒に稽古なんかやってくれないようだ。



「う……ん?まあ、こんなもんかな?…………じゃあ、アルティシア、ここを持って、思いっきり前に投げてごらん。あ、そうそう、ちょうどこの木の棒が上手く回転するようにするといいかなあ~」


「へー?投げるだけでいいの?…………じゃあ、行くわよーーーー、エイ!」



 アルティシアは、右手で木の棒の端っこを持つと、腕を思いっきり体の後ろまで一回引いて、頭の上から振りかぶって、体全体を使って前方に投げ飛ばした。


「お!上手だなあ~」


 ボクは、投げられた木の枝を目で追った。


「えええ!」


 一緒に見ていたアルティシアが、急に大きな声を出した。そして、飛んで行った木の枝を指さしながら騒ぎ出した。



「センセ!枝が、枝が……戻って来たよ!」


 前方に投げられた木の枝は、回転しながら飛び続けたが、ある程度行ったところで、左側に大きく曲がり出した。そして、その後、回転した木の枝は、こちらに向かって戻って来たのである。



「うわ、うわわわ……どうしよセンセ!わわっわ……」


「上手く受け止められたら、掴んでごらん!」


「え?え?……(つか)むったって…………うああああ!」


 何とか木の枝を掴もうと手は出してみたが、敢え無く彼女の頭の上を通り越して後ろに落っこちた。



「あはははははは」


「なーに?タロウセンセ!もう!あたし、諦めないからね、もう一回やる!」


「あーはいはい、頑張ってやってごらん」



 それから、アルティシアは、一人で木の枝を投げて、戻って来たところを掴む練習を始めた。

 なぜか、嬉しそうに、一人で笑いながら、何度も何度も繰り返していた。



(つづく)

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