表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

騒音

作者: 雑賀崎紫蘭

先日、大学時代同じゼミにいた友人に久しぶりに会う機会がありました。

その友人Tは地方の出身で、大学進学を機に上京してきた子でした。

その大学は都心に近い住宅街にあって、Tは大学から歩いて15分ほどの、当時築20年の2階建てのアパートの1階に住んでいました。

ボロアパートというほどではなかったのですが、壁が薄いことが悩みだったというのはよく聞いていました。

ただ大学に近く、渋谷や新宿へのアクセスが良いこともあり、Tは4年間そのアパートに住んでいました。


卒業後、私は広告代理店、Tは保険会社に就職し、この数年間はお互いの状況を全く知らなかったので、久々に会って近況報告をしあいました。

東京生まれの私は学生時代は実家暮らしでしたが、就職を機に会社の近くで一人暮らしを始めました。

一方Tは、30歳になった今でも、学生時代から変わらずあのアパートに住み続けていました。


Tが住むアパートは、わりと人の入れ替わりが激しいそうで、周りの部屋は頻繁に引越し業者が出入りしているそうです。

もちろんTが住む1階だけでなく、2階も入れ替わりは多かったはずですが、1階に住むTは2階の様子はわかりません。

ただ、真上の部屋の物音が変わるので、ああまた引っ越して新しい人が来たんだなと察していたそうです。

Tがこのアパートに住み始めた当初は、上には静かな人が住んでいたようで全く気にならなかったのですが、ある時から大きないびきが聞こえてくるようになりました。

しかしそれもすぐに収まり、気にならない程度の物音になりました。

静かな人、ちょっと騒がしい人、いろんな人がTの上の部屋に越してきました。


Tはここでの暮らしが長いので、多少の物音や声は気にならなくなっていました。

そんなTの生活が一変したのが、今から半年ほど前だそうです。

突然、

ドンドンドン!ガタガタガタ!ドスンッ!

大きな物音がするようになりました。

初めは引越し作業をしているのだと思っていたのですが、いつまで経っても毎日毎日騒がしかったそうです。

そのうち、上の部屋の住人は友人を部屋に招くようになったようで、数人の大きな話し声や笑い声、歌声、時には悲鳴のようなものまで聞こえてくるようになりました。

昼間は耐えていたのですが、夜中に聞こえることもあり、そのせいでTはなかなか眠れなくなってしまったそうです。


上の部屋の住人が夜遅くに騒いでいる日が3日ほど続き、ある日特に騒音がひどい時がありました。

22時頃から騒がしくなり始め、日付が変わる頃になっても、大人しくなるどころか、足音も声も大きくなる一方でした。

音だけでなく、建物自体も足音に合わせて揺れたりもしました。

耐えられなくなったTはついに110番しました。


やってきた2人の警察官に事情を話し、上の部屋に行ってもらいました。

少しすると、物音はやみました。

警察が来たからさすがに大人しくなったのだろうとTは安心しました。

もうこれでしばらくは静かになるだろうと。

インターホンが鳴り、ドアを開けると、先ほどの警察官が不機嫌そうな顔をして立っていました。

そんなにひどい人たちだったのだろうかとTは思いました。

警察官は言いました。

「上の階、空き部屋でしたよ。暇つぶしならよそでやってください」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ