魔法少女の騎士の詩
今度は少女の夢を見た。
とある教会、その中庭。
背格好からして、少女の歳は私とそう変わらないだろう。
未だ幼さが抜けきらないその顔、その大きな青く澄んで美しい瞳の先にあるもの。
少女の視線は、大理石に刺さる剣に向けられていた。
大理石には
『この剣を抜く者、その者を王と認める。』
と、彫られている。
数多の騎士がこれに挑んで、そして抜くのを諦めた。
これは、この剣の記憶なのだろうか。
少女はその剣に、まるで魅入られたかのように歩き出す。
雑草を踏みしめるように歩く少女の背には、これっぽっちも悲壮感なんてのは無かった。
彼女には何が見えたのだろう。
剣は彼女の何を選んだんだろう?
彼女は柄を握る。
彼女もまたこの剣に選ばれたのか、剣はするりと抜けた。
彼女は剣をゆっくりと右の腕で掲げる。
なんて美しい…姿。
彼女も綺麗だったし、剣もまた美しかった。
だがその旅の行く末、待つのは破滅。
朝のとばりが上がる。
朝の日は少女を優しく包み込む。
その光景は絵画と呼べる美しさだった。
だがその絵の具の色は、どうしても私には強烈な皮肉の黒の色にしか思えなかったのだ。
私は、彼女を知っている。
彼女は、あの夢の騎士なのだ。
ひとりぼっちで丘で戦う、あの騎士なのだ。