ミカ・フラットと魔法少女
***
私ミカ・フラットは、魔物討伐の賞金稼ぎをやっている。
魔物を討伐し、それに見合った金を貰う。
このエグリスの魔物は増え続ける一方で討伐が追いついていない。
だから国は初めは討伐の賞金を渋っていたが、魔物対策として賞金がどんどん上げられており、最近では戦える人間にとっては人気の職のひとつになっている。
そうしてお仕事中の所に、大しくじり。
超個人的で下らない話になるが、思い返せばその予兆はあったような気もする。
市役所前で黒猫がこちらをガン見してきたり、
何もないところでつるりと滑ったり、
訓練の途中でなぜか集中力が途切れたり。
……いや、まぁ、関係無いか。
とにかくまぁ、アタシは近頃どうも不運だ。
そしてその不運は私の命まで奪おうとしている。
アタシは運悪く地雷の爆発に巻き込まれて、瀕死の重傷を負った。
しかも、その地雷は自分のものなのだから、もうなんか、ここまで不運だと泣くしかない。
いきなり私と同じくらいの子が飛び出して来て、私はパニックパニックわにわにわに〜状態。
それで地雷が起爆して、
今アタシはこの燃えあがる森でブッ倒れている。
人生というのはいつの間にかはじまっているし、きっと終わりも、「いつの間にか」くるのだろうと思う。
それでこの有様。
ああ終わりか。
やっぱりあっけない。
痛みすらだんだんと薄れていく。
あーあ。
魔物討伐のしょっぱい報酬のために死ぬのかぁ。
けれど別に後悔は無いと思う。
……ふと、気になって。あの子は無事かなと顔を上げる。
黒い長髪のその少女は、ゴブリンと対峙していた。
それもとても大物の。変異種か何かだろう。
大きな身体の魔物は、彼女に唸り威嚇していた。
あの子はとても戦闘員だとかとてもそんな雰囲気じゃあなかったし、その魔物に簡単にやられてしまうだろうなぁ。
なんでここにいたのかな?
賞金稼ぎというナリでもない。
初心者賞金稼ぎの大失敗デビューという線が濃厚かな、なんて。
しかし痛いなあ。
じりじりと痛いし、
内臓を守るための骨もぐちゃぐちゃで、
まあ、どうでもいいや。
と、思考を止めようとした、その刹那。
アタシは熱で自分の目がやられたのでは?
と疑う程の光景が眼前に広がった。
カリバーンと、彼女はそう叫んだ。
その一瞬。
その剣は……大地を裂いた。
それは、とっくに魔術の域を超えている力だった。
私の地雷なんかよりも何倍もの強さの衝撃波を放ち、ゴブリンを文字通りに塵にする。
アタシは自分が瀕死の重傷を負っている事すら一瞬忘れていた。
あの剣。
彼女はいつのまにか剣を持っていた。
今まで生きていて初めて見たと断言できる程に美しい剣だった。
私の中の語彙の辞書では言葉にすら出来ない。
それを表す言葉なんてのは持っていないと思った。
……小さい頃、魔法少女の伝説の絵本があったっけ。
「王の物語り。」
たしかそんな名前の絵本だった筈。
その時に出てきた剣も、確かカリバーンと云っていた。
そして、少女が握っているその剣。
……まさか……ね。
なんて考えながら、私は意識を失った。