魔法少女の体温-④
「これから君はどうする?」
ヘティはそう投げかける。
「正直、どうすればいいのか……マーリンの身体を乗っ取る魔女だなんて、いきなりすぎて。……マーリンの言う通りにしておけば良いと、思っていたから……」
「まあ、だろうね」
「……………………」
「モルガン……あの妖精がねえ。あいつならまあ、おかしくはないけど、人類が滅んで困るのはあいつの方だよなあ……」
「……ヘティに、色々ちょっかいかけてたんですよね?伝承だと……そうなってます」
ヘティは騎士王物語のまさに主人公。
一応御伽噺ではあるし、1000年も前の話で正確性に欠けるやもしれないが、関係性は事実であろう。
「ちょっかいねえ……被ると燃えるマントをプレゼントされた時はさすがに私もキレたよ」
「……それ、ほんとなんですか」
燃えるマントの話がある。
アーサー王に友好の証として、モルガンがマントを送ったという話である。
ただし、被った瞬間全てを灰にする勢いで燃え上がるマントなのだが。
「大マジ。さすがに私もキレた。……まあ、そういうやつだけど……人間じゃあないから、倫理観も価値観も違うし、ある程度ら仕方がないんだろうが!」
「……その魔女が、なんでマーリンを襲って……」
「…………うん。まあ、分からない。……が、彼女の身体をわざわざ奪っているんだ。何か、相当な企みがある。まあ、必ず取り戻してやるさ。マーリンの身体は。そのために。」
「そのために?」
ヘティは手を差し出してきた。
「うん、君の力が必要。力を失った私じゃ、魔物1匹殺すのにも苦労するほどになってしまったからさ。私の願いの成就に、協力してくれる?」
答えは。
「……勿論です。」
私は彼女の手を握り返す。
彼女の手は冷たかった、けれど。
その握手は、とても力強いものだった。