魔法少女の体温-③
「滅びの冬を倒す方法は2つある。さっき私が挙げたように、滅びの冬を維持している魔力が完全に尽きるのを待つか、滅びの冬をその聖剣で討伐するか、だ。」
ヘティは2本の指を折る。
「…………滅びの冬は聖剣の力で封印されてますよね。其れでも呪いの分子がこの世界に漏れ出ていて、それで魔物が異常に多く発生している……んですよね、ニュースだと社会人ストレスの負の連鎖、なんて言われていますけど」
「うん、それは一応ほっとけないだろ。滅びの冬の力は年々衰えているはず。だからこそ今討伐しないといけない、被害者の数を増やさない為にね。ただ一番の懸念が、君が対峙した魔女、モルガンと名乗る女のこと、そして。モルガンに殺されそうになっていたあの少女のこと。」
「少女からモルガンのことを聞いたんですね」
「そうだよ、その名前を聞いた時は耳を疑ったけど。」
モルガンとアーサー。
伝説では、確かモルガンが、綺麗な心を持つアーサーを妬んでいて、色々なちょっかいをかける……という関係性であったはず。
「モルガンは強力な呪いを持っていました。それも、聖剣で浄化できないレベルの」
「その右の頬の傷だね?」
話をしている途中に血がようやく止まったらしく、触ってみれば、傷は既に瘡蓋になっていることが分かる。先程から妙に顔の右側だけが、まるで痙攣するような感覚だったが、それが消えていた。
「超密度に圧縮されている呪いの力、魔女モルガンならではの攻撃方法だな。普通の身体なら、掠っただけで即死のレベルだ」
「……少女に流れ弾が当たらなくて、安堵してます」
「随分とまあ、身体を張ったんだねえ」
「……………………」
「ま、ほどほどにね。自己犠牲の精神なんてのは、文字通り自分を滅ぼすんだから。」
「……ありがとう、ございます」
私はそう返事をした。