理想の行方-①
気がつけば、私はソファで寝ていた。
古本の匂いが漂う中でひとり、ここは図書館だろうか。
「つつ………………」
頬を掠った傷が痛む。
聖剣ですら浄化し切れなかった高負荷の呪いを受けたため、傷の治りが遅くなっている……ようだ。それに痛みも増している。
火傷をしているみたいにずきずきと頬が痛む。
変な跡にならなければ良いが。
怠い身体を起こす。目の前には窓があった。
窓の外にある庭はひどくさびれている。
「ここ…………は……」
数時間前の出来事を考える。
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「……ただ……あとひとつ、聞かせて」
「何だ、宣戦布告のあとに、気が萎えてしまうではないか」
銀髪の女はこちらをじっ、と睨んでいる。
たったひとりの少女なんて何時でも狩れる、そういう彼女の余裕を、放たれるプレッシャーを感じる。
「……マーリンのことを、貴女、どうしたの」
「なんだ、そんな分かりきったこと。目の前にいるじゃないか」
「………………………………?」
目の……前……?
「勘が悪い。この瞳に見覚えはないのか、この憎いくらい青い瞳に」
「…………ま、さか……」
女は髪を上げて目を大きく開ける。
そこには、見知った碧眼。
「未だ変質していないのは瞳だけだ、この女に意識、意思は最早無い。馴染むとはこういうことよな」
「喰った………………と……!?あの身体を……マーリンの身体……を……!?」
「違う、私に喰われたのではない、私に呑まれたのだよ、私に溺れた」
間違いもなくその目は、マーリンのものだった。
某青記憶のメモリアルロビーで頭を撫でられる仕様に気づいた時おいまじかと思ったよね