魔女、そして魔法の少女-①
***
「まさか…………………いや………」
ヘティ……彼女は動揺していた。
「予知が……見えない……?」
彼女は空を見上げた。エグリスの青空。
この先、進む道は正しいのだろうか。だれがこの道のりを肯定してくれるのか?
彼女はそうも思った。
恐ろしい事、への不安から――
***
寒気がした。
「先に帰ってて、ブラックに礼をして行くことになった。」
魔法学校校門前でメッセージを受け取った少し後のこと。
心臓が静まってくれない。
こんな気分のお陰で、視界すら、見え過ぎているのか、ぐらついているのか分からないくらいに身体が動揺している。
気分が悪い。
地上の柔らかい歩道を走る。
最後に彼女の魔力を感じたリンの時計塔へ向かう。
思考が纏まらない。
うっかりで、車に轢かれてもなんらおかしく無いほどに。
私は動揺していた。
…………走る。
時計塔なんてこのリン中心街からならどこからでも見える。
一直線、とまではいかないが、突っ走る。ただ嫌な予感だけがした。
「はあっ……あ……はあっ…………」
見慣れた街の、日常の中にある、ただの昼。
なのにどうして、こんなにも空が暗いのだ。
「………と………時計塔に……何が……」
時計塔前のストリートは静か、奇妙な程。
深呼吸、そして、いつもは観光で賑わいがある筈の、時計塔に入る。
コツコツと音、靴の音。
「………………………………」
論理的にも本能もこの景色が危険であると告げる。
人がいない、この観光スポットである建物に、ただのひとりも、観光客も、警備員も。エレベーターすら動く音も聞こえない。
寒さすら忘れそうになる不気味。
……まるで、魔法使いが、人を、消してしまったみたいに。
「らせん、階段………………」
長い、長い、らせんの階段の前に立つ。
らせん階段の一つ一つの、白色に塗られた階段を駆け上がる。そうすべきと。
頭が、
心が、
私の精神全てがそう焦っていた。
「―我旅人なり、雪の丘。汝旅人なり、道を示す。」
魔力探知の詠唱を唱える。魔力の波動を飛ばし、探知する魔術。
感じたのはひとつの歪み。
「…………なんだろう、この……歪み」
生涯感じたことのない歪んだ気配。
そこに、いるのに、いないような。
そこに見えているのに、見えないような。
そこにあってはならない、しかしなくてはならないような気配。
進むのに足が躊躇う。
進むしかないと分かっていても、進むべきだと分かっていても、その論理的思考とは別のところ、本能が進むべきでないと警告を鳴らす。
「何が……時計塔で……」
されど時間はただ流れていく。
足を止めるほど1秒前に置いていかれる、保留など甘えた選択は無く、目の前にはただの2択。
意思を決意し自分の足でこの道を。
目を閉じて、開ける。
私の緊張をほぐすためのルーティン。
進まねばならない。
道を後退することを私は、否定しなくてはならないから。
……私はそうしてらせん階段に足をかけた。
個人的に、J○J○は月間連載なんだから1部くらいの濃さのものを描けばいいだろうと思うのよねえ