天才ロリコン予言魔術師の女?-①
あの魔術学校入学試験を受け、その翌日朝。
一通の手紙が私の元に届いた。
あかい蝋で閉じられたその封筒の中には、試験合格を告げる通知書、入学に関する書類等々が入っていた。
合格……という2文字は、私にとっての一大事である学生生活の初めを予告するにはあまりに、あっさりとしている気もしなくもない。そんな考えを胸にしまい、入学合意書に万年筆でサインをする。
義務の教育ではなく、戦闘の教育と、4年前のとは全く違う形での学生としての生活。
入学式は明日と案内には書いてある。
式典は魔術においては重要な意味を持つ行いで、それはある種の儀式と言っても過言ではない。どの学校の入学のためのだって式典例外で無く、故、それまでに最低限、式典用の服だけは用意しなければならない。私のクローゼットにも式典服はあるにはあるのだが、もうサイズも合わないし擦り切れている。
それが今日、私が都市リンの中心街にある、仕立て屋さんのカーテに行くことになった過程の顛末である。
「お金足りるかな……」
式典服は高価なモノばかりで、値札を見るだけでどこぞのキャンパーみたく鼻血でも吹き出しそうだ。黒から白まで、何着もの式典服が壁にかけられている。が、やっぱり高い、高すぎる!
式典服には、体内の魔力を活性化させる力が備わっている。式典服に必ずつけられてている飾りの宝石にその秘密があるらしいのだが、現代でも詳しくは解明されてはいない。その力が宿っている宝石は希少価値がひじょーうに高い。
一着で回らない寿司が食えるし、高い式典服であるなら、この国の田舎町の土地ひとつ買えるくらいの高級品にもなる。
勿論、私服で式典に参加するなんて暴挙をする訳にやいかないのでしょうがない。
私のギチギチに硬い財布の紐を緩めて買うしか無い。
…ほんとだよ?
……そもそも私がもう少し大切に式典服を扱っておけば、買い出しする手間は省けたのに。寝巻きなんかにするんじゃ無かったなあ……。なんて後悔が頭をよぎる。
式典服が一面にずらりと並ぶ壁から、ショウケースの中にある高価なこの式典服に意識を移す。
マーリンもこんな感じの綺麗なローブを持っていたような気がする。きらきらしたあかい宝石が付いていて、上品な赤が特徴の魔術師らしいローブ。この式典服にはそれと似たような感じがした。
マーリンのローブの地味な茶色とは対象的な派手目の赤色である。
そこに下品さは無く…堂々とした赤色だった。
「こんなのが買えたらなあ……」
その値札には、右手じゃ足りないくらいにゼロが並んでいる。
式典服の隣には職人の証明書が貼られており、この店の目玉商品であるのには間違い無い。ヴァイオリンならストラディバリウスと言ったところの価値だろうか。
無論高嶺の花の高値の値札、私がその服に袖を通すことすら叶わないだろう……と思っていたら。