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アリス、あなたは魔法少女でいらっしゃいますか?  作者: 猫村有栖
魔法少女の罪と罰-アリスの学園生活?
15/40

もうひとりの魔法少女-②

そんな会話をしていたら、家に到着。


「ただいま。マーリン。」

「おかえり、アリス。」

「アタシもいるよー」

と、隣で腕を振るスーさん。

「ミカも、いらっしゃい?いや、これから住むんだからお帰り、なのかな。」

「どっちでもいいでしょー」

と、スーはキョロキョロ辺りを見回す。

「アタシ、どこ行けばいい?」

「ああ……なら、ちょうどいい場所があるよ。」

スーさんにはとりあえず空き部屋に行ってもらうことにした。

初めて他人の家に居候すると、スーさんも嬉しそうだ。

荷解きを手伝おうかと聞くと、

「あー……ちょい危険物があってね、免許持ってないと取り扱いできないものがあるから大丈夫、気にしないで。片付けは得意だし。」

という。

「危険物?」

「地雷のタネみたいなアレだよ。」

「ああ、魔樹抽出飽和式火薬?スーさんのあのタイプだと32号モデルかな。」

「そう、多分そんな感じの名前。よくスラリスラリ出てくるなあ。流石魔術オタク。」

「それなら私も手伝えるよ。趣味で免許を取ったから、5年前。」

「凄いな!?というか、趣味で取るやつ初めて見たよ!すごいなあ。今日の試験が簡単に感じるわけだ……」

「いやあ私には、これしかないから……私には。他はまるっきりダメだし。」


と言いながら手を動かし初める。


さて、荷解きが完了し、スーは礼の言葉をくれた。

彼女は部屋で何か作業があるらしい。

私はスーの部屋を去った。


そういえば、マーリンはいつもリビングにいるが、睡眠はどうしているのだろう。

微妙に気になる。

いや、そもそも1000年生きてる魔術師に睡眠が必要か、なんて聞かれれば、不要ではないかと考えるのが普通だが。


とりあえず、やることもないので――


マーリンと話してみよう。

リビングのドアを開く。

そこで、マーリンがソファーで横になって寛いでいた。


「今日、大変だったらしいね。」

「まあ……ね。」

「まあ、座りなよ。ゆっくり話そう。」


私はそのソファーの淵に座る。

テーブルを見ると、お菓子と紅茶を用意してくれていた。

これは嬉しい。


私は紅茶と甘いものに目が無い。

甘い物と紅茶の組み合わせは無敵だと思う。

いや、本当に勝るものがない。


マーリンは気を使ってくれているんだろう。

その気持ちをありがたく頂戴する。


「高そうなクッキーだね……ほんと美味しいわ、ありがとう。紅茶も美味い……!淹れ方が上手いのかな?こんな紅茶、どこの店でも飲めないわよ。」

「ふふ、喜んで貰えたようで何より。自信作のクッキーが気に入ってもらえて嬉しい。」

「へぇ……自作なんだねクッキー…どんな風に作ってるんだろ……今度教えて?」


「勿論。ははは、これが今時ので言う女子会ってやつ?」

「確かに…………いいな、やっぱり友達は。」


その言葉のあと、マーリンは

「友達……か。」

なんて口にした。


きっと、マーリンには何か思うところがあるのだろう。

友達。


マーリンは千年生き続けた魔術師だ。

だから、友達だったり、家族との別れもきっとあったんだろうし、その過程は私にはとても想像なんかできない。

人は人。

私は私。

事情には、触れない方がいいのだろう。


それはそれとして、私はマーリンに質問する。


「ねえ、突然だけどマーリン。人ってさ、変わると思う?」

「変わる?どういう風にさ。」


「今日、昔の友達に会ったのよ。」

私は事情を話した。


「つきまといかあ。いかにも、不器用な子って感じがするねえ。」

「そうなんだけど、やっぱり、前までは優しい子だったから、心配で……。」


マーリンは、少し考えて返事をした。

「そうだねぇ。変わる、か。定義によるけど、まあ、変わるよ、在り方は。」

「……内面も?」


「うん、どうだろうなあ。人ってのは皆んなペルソナを持ってる。簡単に付け替えられる仮面のことだ。それはあくまで仮面だから、大概簡単に付け替えられる。だけど内面となるとそうはいかない。いや、どころかね、人は本質までは変われない。その在り方は変わっても、まあ、根本はいつまでも変わらない。」

「三つ子の魂百……みたいな?」


「ま、そんなとこだよ。その子だって、何かがきっかけで在り方が変わったんだと思う。しかし、ブラック家か…」

「知ってるの?」

「1000年前にもいたからね。まさか、ここまで潰れずにいたとはねえ。」

「1000年……そんなに。」

シェリーからは、由緒正しき名門だと聞いていたが、そんなまさか千年も続いている家系だとは思わなかった。

「しかも、悪名高いのも千年前からずっと一緒さ。政治介入、荒事、薬……そういう噂。」

マーリンは続ける。

「そんな家の令嬢と良く付き合ってたね。そういう子は、現代だといいいじめの的になるらしいじゃないか。私にゃ理解できないが。」

「シェリーは関係無いから、よ。」


家の噂なんて関係が無いこと、これは間違ってないと思う。

そんなのは気にも留めなかった。


「あ、そういえば、そろそろ新聞が届くころかな。」

と、マーリンはソファーを立つ。


「あ、届いてたからさっき取っておいたよ。ほらそこ。」

「ありがと。ふーむ…………何何…………おっ、ロンゴミニアドを抜いた魔法少女の名前が公表されたらしいね………………ブラック家の………………シェリー………………まさか…………」

「は?」

私は新聞を覗き込む。


「シェリー……ブラック………………魔法少女の決意……」


「はぁああああーーーー!!!?」

飲み物を口にしていなくて良かったと心底思う。

吹き出して、マーリンのその高そうなその服を確実に汚していただろう。


彼女がロンゴミニアドに選ばれた魔法少女……!?


私はまたも、運命とは、この新聞のように簡単に読めるものではないということを、また思い知った。


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