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白と黒の饗宴6

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

 一か月後、直通は陰陽寮を訪ねていた。

「仕事量が大変な事になっているらしいな。これ、差し入れだ」

 光明に唐菓子を差し出す。

「有難うございます。……時子様のお屋敷に寄ったのでしょう?様子はいかがでしたか」

「……相変わらずだよ」

「……そうですか」


 仕事部屋の中では、暦生が数人机に向かっている。直通は、外を眺めて言った。

「……あれから一か月か。壊された建物の修復も進んでいるし、平和な日常に戻りつつあるな」

「そうですね」

「……ところで、今更だが」

 直通は、暦生の一人を睨みつけた。

「どうしてお前が生きているんだ、()()


 紅玉は、肩をびくりと震わせて振り返った。

「あれ、完全にお前が死ぬ流れだっただろう。何が『一番大切に思っている』だ」

「仕方ないだろう、あれは俺自身も死んだと思ったし」

「本当に。鬼は丈夫とはいえ、あれで死なないとは」

 光明が呆れたように言った。


 紅玉は、あの襲撃から意識を失っていたが、十日間程で目を覚ました。怪我も順調に回復している。そして何と、紅玉は暦生として陰陽寮に通う事となった。どこの馬の骨と知れない紅玉が暦生になれたのには、平基家の存在が大きく関わっている。驚くべき事に基家は、自分の父親に、紅玉を養子にするよう掛け合ってくれたのだ。


 紅玉が暦生になれた理由は、それだけではない。件の襲撃の際、紅玉が鬼と戦って、結果的に宮中を守った事が知られるようになったのだ。一部の武官や文官は紅玉が鬼である事を知っているが、紅玉が功績を挙げた事は事実なので、表立っては誰もその事を指摘しない。公然の秘密である。


「……暦生になるとはな。時子との将来をちゃんと考えているのだな」

「……ああ。時子はどんな環境でも良いと言ってくれると思うけど、なるべく時子に苦労を掛けない形で一緒になりたい」

 直通は、溜息を吐いた。

「時子は、お前の役に立つかもしれないとか言って相変わらず熱心に薬草の勉強をしているし、もう入る隙間が無いな」

「隙間など作らせない」

 光明は、やれやれといった表情で二人のやり取りを聞いていた。


 その夜、紅玉は久しぶりに鬼ヶ原神社に来ていた。気を失っている間は光明の屋敷で世話になったし、その後は基家の屋敷に住まわせてもらっている。

 今の屋敷に持ち込みたい書物等を纏めていると、時子がやってきた。


「紅玉様、お忙しそうですね」

「ああ。覚える事が沢山あるし、引き越しもあるからな」

「無理しないで下さいね」

「わかってる。……時子」

「はい」

「落ち着いたら、その……正式に夫婦になろう。時長様にも挨拶に行くから」

「はい」

 時子が満面の笑みで答えた。


「……久しぶりに、あそこの岩に座って月を見ないか」

「いいですね」

 二人は、岩に座って月を眺めた。幸せな日々が長く続くよう願いながら。


完結しました。

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