白と黒の饗宴4
実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。
「直通様、蔓に気を付けろ。刺されると毒が回る」
「わかった」
朱雀門では、紅玉と直通が白樹の攻撃を何とかかわしていた。呪術で蔓の拘束だけでも出来ないかと紅玉が水の渦を出すが、蔓は水の渦を難なく吹き飛ばしてしまう。蔓が再び直通を狙う。直通は一旦蔓を避けたが、横から蔓に叩きつけられ、武官の側まで吹き飛んでいった。
白樹の剣が紅玉を狙う。紅玉の頬を刀がかすめ、その拍子に烏帽子が地面に落ちた。うまく紐で括り付けられていなかったのだろう。紅玉の角が露になった。武官の一部から声が上がる。
「直通様、あの黒い髪の男も鬼……」
「気のせいだ」
「いや、しかし、あの角……」
「気のせいだ」
直通は、伸びてくる蔓を切り続けながら、無表情で繰り返した。そして、懐からある呪符を取り出した。
白樹が再び紅玉に斬りかかる。紅玉の身体を切り裂いたと思ったが、紅玉の姿は人型の紙に変わっていた。しかし、蔓が本物の紅玉を攻撃する。やはり、幻覚を見せても匂いで紅玉の位置がわかるらしい。
紅玉が避けてまた蔓を焼き尽くそうとした時、紅玉の身体がぐらついた。毒が回っている。その隙を見逃さないように、白樹が駆けてきた。刀で串刺しにする形で、紅玉を塀に叩き付けた。口から吐いた血が地面に落ちる。紅玉の腹部には血が滲んていた。
「諦めろ、もう終わりだ」
白樹が口を開いた。しかし、紅玉は口角を上げて言った。
「終わりなのはお前だ」
その言葉を不思議に思う間もなく、白樹の身体に衝撃が走った。白樹の背後から、呪符を巻き付けた刀が突き刺さり、白樹の心臓を貫いていた。
「やっと動きが止まったか」
そう言ったのは、白樹の背後にいた直通だった。
「……全然気づかなかったな」
口から血を流しながら白樹が呟いた。
「光明からもらった、人の匂いを消す呪符だ。一度しか使えないから、使う機会はよく考えるよう光明に言われていたがな」
直通が、白樹の身体から刀を引き抜きながら言った。
「……そうか、私はもう死ぬのか……」
白樹はそう言って地面に倒れた。
物を言わなくなった白樹を見て、直通が言った。
「心臓を刺したが、一応首を切っておくか」
直通が刀を構えたが、紅玉が止めた。
「いや、俺がけじめを付ける」
紅玉は直通から刀を受け取ると、白樹を見下ろした。
「……あんたとは、違う形で会いたかったよ」
そう言って、紅玉は刀を振り下ろした。
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