表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

白髪の鬼3

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

 鬼四が姿を消して五日目の事。ある農村がほぼ丸ごと炎に包まれていた。白樹の分身らしい小鬼が何匹も出てきて、人々を襲っている。

「いやあ、壮観だねえ。でも、村人を炙り出す為に火を放ったけど、思ったより人が少ない。煙を吸い込んで死んでしまったかな?」

 白樹が笑いながら言う。

「お前の恨みも晴れただろうし、今度は、都に戻ってもっと大量に人間を狩ろうか。一緒に来てくれるな?」

「……ああ」

 鬼四は、真顔で答えると、燃える村をじっと見ていた。


 牡丹に勉学を教えた次の日の夜、時子は鬼ヶ原神社に来ていた。

「またここに来ていたのか」

 振り向くと、直通がいた。

「……ええ、眠れなくて……」

「紫苑と牡丹が心配していたぞ」

「……心配かけて申し訳ないと思っています」


 相変わらず、鬼四の行方はわからない。光明が式神の杠葉を使って探ってくれているが、見つけるのに時間が掛かるようだ。

「……法眼が人を食い殺したとは、お前は思ってないんだな?」

「当然です。あの方は、そんな事はしません」

「……そんなにお前に信頼されているあの鬼が、羨ましいよ」

「直通様の事も信頼していますよ」

 人の気も知らないで。


「……でも、私の事を信頼しているのは、友人としてだろう?」

「……え?」

「私は、お前の事を一人の女として愛しいと思っている。お前にも、私の事を友人ではなく男として見て欲しい。できれば、ずっと共に生きていきたい」

 沈黙が流れる。しばしの後、時子が口を開いた。

「……あなたと共に生きたら、私は幸せになれるのでしょうね。直通様は、優しい方ですもの。……でも」

 時子は天を仰いだ。

「私は、違う形の幸せを手に入れたいと思ってしまうのです」

「……そうか」

 直通は、寂しそうに笑った。


「女が一人で夜に歩き回るのは危険だ。帰ろう、屋敷まで送るよ」

「……ごめんなさい、いえ、ありがとうと言うべきでしょうか」

 時子は考えた。いつからだろう、あの優しい鬼の事ばかり考えるようになったのは。あの鬼の側にいたいと思うようになったのは。……いや、きっと考えても分からない。今は、ただ会いたい。すぐに、会いたい。


よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ