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白髪の鬼2

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

「私はずっと、お前を探していたんだよ」

 姿を消す十日前、会ったばかりの鬼にそう言われて、鬼四は怪訝な顔をした。

「何故俺を?あんた、誰だ?」

「私は、白樹(はくじゅ)と名乗っている。……お前の兄だよ」

「俺には、兄はいないが」

「本当に?お前、自分の親を知らないのではないかな?」


 確かに、鬼四は血の繋がった親を知らない。鬼四は、赤子の頃山に捨てられていたのを、人間の夫婦に拾われた。夫婦には子供がいなかった。二人は優しく、鬼四は実の子供のように育てられた。


 だが、鬼四が五つになると、問題が起きた。角や牙が目立ち始めたのだ。それでも夫婦は変わらず愛情を注いでくれたが、周囲から冷たい目で見られるようになった。鬼四を捨てろだの殺せだのという言葉が頻繁に聞こえてくるようになった。


 夫婦は最後まで鬼四を育てようとしてくれたが、明らかに疲弊していた。そんな二人を見て、鬼四は八つの時に自ら家を出た。家を出た後は、しばらく山で猪等の獣や野草を食べながら旅をしていたが、その内陰陽道の師匠である蘇芳と出会った。蘇芳がいなければ、鬼四は人間とうまく関わる事ができなくなっていただろう。


「鬼には、力の弱い子を捨てる習性があるんだよ」

 白樹が話を続けた。

「お前は、力が弱いと判断されて捨てられた。でも、父と母が亡くなって、私は寂しくなってしまってね。……私と一緒に、人を狩って生きていかないか?」

「……断る」

「そんなに人間が大切なのかい?人間を恨んだ事は無い?人間を醜いと思った事は?」


 鬼四の脳裏に、村人達の顔が浮かんだ。まだ幼い鬼四に石を投げつけてきた者、優しい夫婦に罵声を浴びせた者……。

「お前が育った場所は大体見当がついている。まずは、お前が恨んでいる人間から狩ろうじゃないか。明日の夜、今と同じ位の時刻にここに迎えに来るから、一緒に狩りに行こう」

 白樹は、笑顔で言った。


 貴族が行方不明になった話を聞いた次の日、時子は自分の部屋で牡丹に学問を教えていた。側には、牡丹の養母となった紫苑もいた。

「……ま、時子様」

 牡丹の言葉に、時子はハッとなった。完全に上の空だった。

「ごめんなさい、何だったかしら」

「ここの字が読めません」

「ああ、これは……」


 教えながら、時子は鬼四の事を考えていた。鬼四が行方不明になった貴族達を亡き者にしているとは思わないが、鬼四が行方を晦ました時期と貴族がいなくなった時期が重なっている。何か良くない事に巻き込まれている可能性は高い。

 心ここにあらずといった様子の時子を見て、牡丹と紫苑は顔を見合わせた。


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