笑う女3
実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。
鬼四は、式神を使って木片に纏わり付いている怨霊の念を一つずつ引き剝がしていた。そして、次に光明からもらった呪符を使って浄化していった。光明から教わった呪文もすぐ覚えたので、今の所順調に浄化している。このまま余計な念を浄化していけば、最後には呪いの主の念だけが残り、誰が呪詛したのかわかるだろう。
そんな鬼四を真顔で見ていた光明は、呟いた。
「手際が良すぎる……」
「……何か言いましたか、先生」
やはり体力を消耗するらしく、鬼四は死んだ魚のような眼をしている。
「お前、誰に陰陽道を教わった?」
「あー、本名は分からないけど、蘇芳と名乗っていましたね。俺が出会った時は、二十歳前後の女でした。出会ったのは俺が八つの時だから、二十二年前ですね」
「……お前、三十歳なのですか?私より年上……」
「まあ、鬼は見かけで年齢が分かり難いですからね」
「……そうですか。ああ、そろそろ休んで良いですよ。私はもう少し浄化を続けます」
「お願いします」
鬼四が縁側に腰を掛けると、不意に声を掛けられた。
「お疲れ様です」
そこにいたのは、実継だった。
「そうですか、麗子様の人柄を確かめに来たと」
寺の庭で、住職は言った。今庭には、時子、直通、住職の三人しかいない。実継の病について本人の了承無く話すわけにもいかないので、ここに来た理由は噓をついた。知人の子供が麗子に勉学を教わりたいと言っているが、見ず知らずの女性に子供を任せるのは不安なので評判を確かめに来たという事にした。
「麗子様はお優しくて、知識も豊富ですよ。麗子様の教え方は子供には分かり辛いのではと思う事もありますが、勉学についてこれない子供に寄り添って、根気よく教える事の出来る方です」
住職は、穏やかな顔で麗子を褒めた。
「しかし、麗子様が元気そうで良かった。昔から麗子様の事を存じ上げていますが、大江家に嫁いだ時から、心配していたのですよ」
「というと?」
直通が聞いた。
「実は、大江雅広様には悪い噂がありまして。妻である麗子様に暴言を浴びせて虐げていると……。それだけではなく、麗子様が嫁いで三年後くらいでしたかな、雅広様は謀反を企てた罪で流刑が決まりました。獄舎の環境が悪かったのか、刑が執行される前に病死しましたが」
「そんな事が……」
時子は目を伏せた。
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