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第5幕 引力


9月30日


 今日は学校の文化祭の日。窓から下を見ると、煌びやかな装飾とこれから賑わうであろう出店が並んでいた。隣には彼。なぜ2人で文化祭を回ることになったのか。今回は珍しく遡って話すことにする。


9月16日


 文化祭の準備が本格的に始まったのは、あの移動教室の次の日のことだった。昼からの授業は全て文化祭の準備を行うという期間は去年の俺にとってはそれなりに苦痛だったが、今年は彼を見られる時間が増えるというだけで幸せだった。

 文化祭は9月30日と10月1日の2日間行われる。毎年うちの学校の文化祭はドラマでよく見るような大盛り上がりの楽しい文化祭として話題になっていて、それ目当てで入学する人も少なくない。2年の俺たちはステージ発表をすることになっている。

「じゃあ、劇の台本はこれで決定な!配役決めていくよ!」

と、委員長の声。彼はやっぱり主役だろうか。絶対素敵だろう。そんなことを考えてぼーっとしていると、

「なぁ、お前は何やんの?」

と彼に話しかけられた。

「え?えーと、何も考えてないけど.......。奏多は?」

「俺は照明とかしようかなって。」

「え?役者やらないの?」

少し大きめの声で言ってしまった。するとクラスの皆がその流れに乗って口々に「そうだよー!カッコイイんだから似合うよー!」とか、「ぴったりだよー!」とか、そんなことを言い出した。

「皆が言ってるし、どうかな?」

と委員長は彼に聞く。クラスメイトの圧に押された彼は

「分かった.......。」

と答えた。

「ただし!こいつ照明でよろしく。」

彼は俺を指差して言った。

「光本くん!よろしく!」

と、喋ったこともない女子からの圧。彼が役者をやることになったのは半分くらいは流れを作った俺のせいでもある。やるしかない、と思った。

「やります.......。」

そう言うと女子たちはみんな嬉しそうな顔をして「決まりだね!」「楽しみ!」と騒いでいた。そこからはあまり覚えてない。

 役が決まり、分担ごとに集まって話し合いをすることになった。照明担当は俺含めて4人。俺はどうすれば彼が引き立つ照明ができるかと考えすぎて話に乗れず、気づいたら今日の準備は終わっていた。俺はどうやらスポットライト担当になったらしい。せめて明日は話を聞いておこうと誓った。


 その日の放課後のことだった。俺が帰ろうとしたとき。

「なぁ、時間ある?」

彼に呼び止められた。

「あるけど.......。」

「じゃあついてきて。」

「う、うん。」

成り行き的な感じで一緒に帰ることになった。めちゃめちゃ嬉しいのだが、あれから話していなかったので、やっぱり怒っているだろうか、と思うと気が気ではなかったのだが、彼からそんな空気は感じられなかったので余計不安になっていたが、彼からは予想もしなかった言葉が発せられた。

「あの.......ありがとな。」

「え?」

「いや、俺が照明押し付けたのにやるって言ってくれたからさ。結局秋が何やりたいかとか聞いてなかったのにと思って。ごめん。」

「い、いや、こちらこそごめん!照明やりたいって言ってたのに奏多が役者やってるとこ見たくて.......。」

「それは全然いいよ。別にどうせああなることも分かってたし。」

なんて優しいんだろうか。

「まぁでも、秋がやれって言わなかったら断ってたかもな。」

「え!?」

「冗談だよばーか。」

心臓が急激に加速したのを感じる。俺はこんな冗談に振り回されるのですら嬉しいと思ってしまう。

「でも、たぶん女子に言われただけだったらほんとに断ってたよ。」

期待.......しても、いいのだろうか、と思ってしまう。きっとまた冗談だろう、なんてことは分かってるのに。望む答えが欲しくなる。だから、聞いてしまった。

「奏多は女子に人気があるのに、嬉しくはないの?」

その言葉に足を止め、彼は俺を真っ直ぐ見つめてきた。

「秋は?お前は、女子に人気だと嬉しいのか?」

「へ?」

なんで俺なんかのことを?

「ま、まぁ、嫌われるよりはいいとは思うけど.......。」

「.......嬉しいんだ。」

「いや、そういうわけじゃ.......。...奏多は?」

「.......俺はおま.......女の子に好かれても別に嬉しくない。」

「そ、そっか.......。」

目が離せない。彼の目の持つ引力に引き寄せられる。足が動かない。でも、次の言葉も見つからない。何か言わなきゃ。なにか.......。

「.......ねぇ、奏多、俺には?」

「え?」

何聞いてるんだろう。自分でも分からない、けど。聞きたかった。

「俺は、秋に好かれてるなら嬉しいよ。」

「へ?」

「そっちが聞いてきたんだろ。」

「う、うん.......。」

気持ち悪いって思われて嫌われてもおかしくないと思ったのに。望んでた答え。本当に嬉しくて、向き合っているのに頬が緩んでしまう。恥ずかしくて目を逸らしたその時。彼の顔が俺に近づいた。

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