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第2幕 彼

第2幕にはBL要素が登場しません。ご理解頂いた上でご覧ください。

6月25日


あの舞台を観てから3日。俺は未だにあの舞台から、彼から意識が離れなかった。あれから調べてみたが、高校生の劇団ということもあって、彼が誰かを知ることは出来なかった。だけどどうしても彼をもう一度見たい。その気持ちは変えられなかった。きっと、これは恋なんだと思う。俺の、初めての、初恋。一目惚れってやつだ。いつかクラスの奴が「一目惚れは性欲からくる」なんて言っていたが、この気持ちはそんなものではない。もっと美しくて、言葉にはできない何か。恋と呼んでいいのか分からないほどの。

「もう一度だけ、会いたい。」

もう何度目か分からないその言葉は今日も泡のように弾けた。

俺は常になんとかして彼に会う方法を考えた。同じ劇団に入るのもアリだな。いや、俺に何ができる?そうか、彼を美しく照らす照明を作ればいいんだ。いや、待てよ?ホームページもない劇団に入る方法なんてあるのか?そもそも募集なんてしていないだろう。ああ、会いたい。これを繰り返す。今までの無意味な毎日は彼に会う方法を考えることで満たされていた。


9月1日


あれから何も出来ぬまま夏休みが終わった。今日から新学期だ。考えるだけで何もできない日々を繰り返すうちに、今までと何も変わらないことに気づいてしまった。結局俺は無意味な日々から抜け出せないままだったのだ。だが人生は何が起こるか本当に分からない。簡単に日々が変わることはないと気づくと同時に、奇跡は本当に起こるのだとも知ることになる。

朝のホームルームのはじまりを告げるチャイム。ドアから先生と一緒に入ってきたのは紛れもなく彼だった。

「おはようございます。今日は転校生を紹介します。」

転校生?まさか……

「はじめまして。水本奏多といいます。よろしくお願いします。」

みずもと、かなた。彼は奏多という名前だったのか。同い年だったのか。思ったより背が高いな。……じゃなくて何でここにいるんだ?どういうことなんだ?

「皆さん水本くんと仲良くしてあげてくださいね。席は……あそこ。光本くんの隣ね。」

光本くんの、隣?こうもとくんの、となり?俺の、となり?夢なのか?隣に彼が来るのか?鼓動が加速する。俺はどうなるんだろうか。間違いなく分かるのは、人生がこれから鼓動ほどの速さで変わっていくことだけである。

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