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異世界スロー旅~雑草少女の旅するスローライフ~  作者: 鷹山リョースケ
第三章

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067 裸族の小休憩

新章開始です。

 ベルレ達と再会した私は再び四人で旅に出た。

 基本的に町には滞在せず補給に寄るだけで、森の中や山の中、河原と、正統派アウトドアを満喫した。

 馬車は早々に手放して、プレシオだけを連れた徒歩の旅である。

 旅というか単に移動なんだけど。

 交通網が発達してるわけじゃないから、ちょっとした移動も旅になってしまう。


 目的地はサフィラス離宮。

 なんかスゲェ高山の上にある、マチュピチュみたいな……チヴィタとかオルヴィエートみたいな……なんかそういう、山の頂にある宮殿だ。

 常に誰かが住んでるわけじゃないから、宮殿じゃなくて離宮と呼ばれているらしい。

 セルバに行く前に一度だけ立ち寄ったことがあるんだよね。


 建築様式は独特で、階層が四方八方に複雑にズレながら重なっている。

 山肌という凹凸のある斜面に建ってるせいでもあるんだろうけど、大規模なスキップフロアの連なりというか……あれだ、サルノコシカケみたいな。


 ベルレの持ち家の一つだそう。

 いや家ってレベルじゃないんですが。

 ベルレが世界金持ちランキング上位とかじゃないと納得がいかない規模なんですが。

 離宮ということはベルレってどっかの王族なんです? とたずねたけど「違う」と言われたのでまあ違うんだなということで流した。

 いわゆるフクザツな経緯がありそうな気配がしたし。

 面倒くさいから聞きたくない。

 実際世界金持ちランカーなんだろうなとは思うけど……そのセレブは今、森の中で木箱に腰かけてぼんやり薬煙草をふかしていた。

 全裸で。


 実は私も全裸なんだけどな。ハハハ。

 シェルリが全員、身ぐるみ剥いで洗濯に行ってしまったのだ。

 だってさー、辺境の不便な旅の道中なんだよ? 別に着たきりでもよくない?

 パンツは替えてたよ。いいじゃんそれで。ダメかー。

 元密偵的には体臭を感じた時点で絶許らしい。

 別にこれから潜入任務にあたるわけでもないのに、と心で思ってもカーチャンには逆らえなかったよ……。


 横に立ってるグラディも全裸だけど、わりと全裸だから慣れたや。

 常時身体強化と魔力鎧を展開してるので、服を着てる・着てないの感覚が鈍いって言ってた。

 そんなわけがあるか!

 単なる露出癖だ。きっとそう。

 まあどこでお出しされても美の暴力を脳天にくらう完璧ボディだからいいけど。いいのか。本人がいいんだからいいか。


 ちなみに魔力鎧とは魔力をぎゅーっと圧縮して体の表面に展開してある技、らしい。

 要するにバリアとか障壁とかだろうなと思う。

 防御の備えは最優先なので、私も習っている。


 裸族の中でもシェルリは普通の慎みを維持している。

 見られて恥ずかしいという感性がないのは同じでも、ちゃんと隠すし、無駄に脱がない。いいことだ。


 ベルレも無駄に脱がないけど、どちらかというとグラディ寄りで、服を着てる・着てないの状態を忘れがち。

 全裸で歩き出して何かペチペチすることに気づき、なんでだ? と見下ろして、おお、穿いてなかったわ、と気付く。

 アホなの?! 生まれた時に一緒に生まれた最初の息子だろ。忘れんなよ。


 私は普通に恥ずかしいです。だから今もシーツを被ってる。

 大事だと思うよ、羞恥心!

 戦闘時には投げ捨てるものでも、平時には残したい。

 それに私はやっぱり野外で全裸だと不安感が先に立つ。

 例えば山ヒルとかがポトッと落ちてきたとして、布一枚とはいえワンクッションあるとないで大違いじゃない?


 だいぶ話が逸れたけどサフィラス離宮のこと。

 前に立ち寄った時は上層の本館には入らず、下部の使用人層にある広場みたいなところでキャンプした。

 荷馬車が麓からそのまま上がってくるから、荷下ろししたりする場所だそうだ。

 そのまま上がってくるというのは、なんと昇降機があった!

 「機」と言っていいのかは判らないけど。

 山の麓の洞窟に入ると広間があって、その中央にいかにもそれっぽい丸い魔方陣が刻んであって。

 その中に入ると、円がそのまま床石ごとズゴゴゴゴとせり上がっていく。

 でっかい石柱が上下するのだ。なんという力技!


 石柱昇降機で上がれるのは使用人層まで。そこから上に行くにはひたすら階段だ。この離宮の使用人は生活するだけで修行になると思う。

 前の時はそんな階段チンタラ上るのめんどくせえ、ということで使用人層の広場でキャンプした。

 プレシオに乗って周囲をぐるっと見て回ったりして、楽しかったなあ。


 誰も人がいなくて、ベルレに聞いたら本館に人がいない時は使用人達は離宮を少し下ったところにある、サフィラス村みたいなところで暮らしてるんだそうだ。

 広大と言っていい宮殿が静まり返っている様子はVRゲームみたいで、そこに自分達だけっていうのはなかなかに贅沢な体験だった。

 離宮本館には入れなかったけど、使用人層だけでも私には十分心躍る「お城」だった。

 また行けるの楽しみだなあ。



 ◇ ◇ ◇



 服は魔法で強引に乾かして、私達は出発した。

 今はどこ歩いてるんだか私は判らないけど、どこかの森の中だ。

 森の木々は高く伸びて幹も太い。木と木の間はわりと離れていて、案外歩きやすかった。

 それでもバサバサ茂っている下草をシェルリが魔法で豪快に吹き飛ばして道を作っていく。

 いいのそれ? と思ったけど草なんて明日には芽が出てるって。マジカル農業国マジマジカル。


 そういやグラディが狩りに行った時、しばらくして遠くの方で木が倒れるような音がしたから何か狩れたんだろうなと思ったけど、よく考えたらそれも豪快な自然破壊だ。

 でもこの国では植物に限定して、自然破壊とかいう概念がなさそう。

 だって、仮に森の一部を焼き払ったら「ヒャッハー! 空地だぜえー! 太陽が当たるうううう!」って感じで若木の縄張り争いが即日始まるんだよ。もちろん草も生い茂る。


 種って動物が食べてフンとして落として広がるのでは……? と思うじゃん。

 そのルートも勿論あるんだけど、それとは別に枝から直接種を飛ばしてきやがるのよこの国の木って。

 森で空地ができると周辺の木々が種を撃ち合う修羅場と化す。

 その説明した後に「森は危険なのですよ」って言われて、どんな顔していいか判らなかったよね。

 私達一行が通った後しばらくして、背後の方でパシュッとかビシッとか音がするから怯えてた私アホじゃん。


 更にそこに魔木だの魔草だの魔花だのが混じり込んで、魔虫も魔獣も日々生存競争に参加してるんだから辺境の森は本当にヤバい。

 ちなみにシェルリの魔獣避けは魔木等の植物系にも有効で、近付くとなんかスッ…と普通の木の気配になる感じがする。

 でも魔獣ほど反応が顕著じゃないから先制攻撃なのだそうだ。


 そうして破壊と再生を繰り返しつつ森を歩いた。

 


三章は山の上のお城でリゾートライフ、グルメ、村での素朴な暮らし体験など、今度こそスローライフです。

たぶん……


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