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異世界スロー旅~雑草少女の旅するスローライフ~  作者: 鷹山リョースケ
第二章

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058 荒くれ拷問

 聞きたいことってそりゃあ、荷物どこだよ?! ってことだけど。


「み、みんなはどこっ」


 瞳うるうるでミカルタのマントの陰から一応、声出ししておいた。

 トマスは私を見て釈然としない様子だったが、ジーナがどこからか棒きれを拾ってきたのを見て、それどころじゃねえって顔になる。しかもその棒きれを腿でへし折って、雑に折れたギザギザの部分を満足そうに見てるし。


「こ、この下の神殿だよ! 洞窟が神殿になってんだ」

「神殿を隠れ家にしてやがんのか。ろくな死に方しねーぞ」

「ろくな死に方させないよー」


 のんびりとしたヒューの合いの手だったが、逆に効いたのか、トマスは素直な態度を見せた。

 幸い? なことに神殿にいるのはセルバを出た一行と、後で水樽等と一緒に合流した人足のおっさん二人と、緑の蔦だけとのことだった。


「ほんとかあ?」

「嘘なら罰を与えるだけだよ」

「嘘じゃねーよ、今更ここでそんなウソ吐いたってどうしょうもねえだろ」

「なんで子供攫ったの。売るの?」


 ウルウル芝居も面倒くさくなったので普通に聞いたら、トマスが胡乱な目を向けてきた。


「お前……なんなんだよ」

「あと、子供達の私物は?」

「私物? ああ、箱をいくつか運んだっけな」


 それから神殿内の間取りを聞き出して、黒幕は館長達だということが判った。

 館長、スサニタ、おっさん神官、合流したおっさん二人、全員アウトだ。

 それはまあ、ある種想像通りなんだけど。


「ガキ共をどうするのかは俺らは知らねえ。ただ攫う依頼を受けただけだ」

「ほんっとクズだな。だがお前らのご活躍もここで終わりだぜぇ。誰が許してもあたしら赤鰐が許さねえ」


 トマスは誘拐団と雇われ実務担当みたいな流れに持っていこうとしてるけどさ。

 お前、自分の口の軽さ舐めてんのか。


「じゃあ、フリアン騙くらかした話教えて」

「は? なんのことだよ」

「ジーナお願い」

「あいよ」


 阿吽の呼吸でジーナがトマスの口を踏みつけ、棒きれのギザギザ部分を内腿の柔らかい肉に突き立てた。慣れてんなあ。

 汚い悲鳴が上がる。


「なんかこの人ばっか痛い目見るのも不公平だよね。グリーシンにしようか」

「あいつは強ぇからなあ……手足全部折らねえと。斬ると血が出過ぎてすぐ死んじまうし」

「もう首落としたでしょ!」

「いっけねえ! ごめんよぉ」

「君達こわいねえ……」


 身を捩りながら激痛にボロ泣きしてるトマスを一応ヒューは治した。

 トマスのシャツを破り取り、口に突っ込んで引きずっていく。


 トマスはその辺に放り出して、グリーシンの死体の首をくっつけ、でも手足は折ってから念のため縛って、ヒューが蘇生した。

 この辺りの塩梅はさすが本職だなと思う。私だとうっかり傷も一緒に治しそうなんだよな。実際ジーナがそうだし。


 目覚めたグリーシンは痛みに叫びだしたので慌てて口に布を突っ込んだ。「カッコ悪っ」とジーナが吐き捨てる。いや私も手足折られたら叫んじゃうなあ。


 ジーナの荒くれ拷問とヒューの癒やしの回復により、二回ほどリスキルをキメるとグリーシンは色々どうでもよくなったのか、死んだ眼でわりと喋ってくれた。

 私の精神の方が先に音を上げるわ。別に嗜虐趣味があるわけじゃないから、苦悶の悲鳴や人体損壊を延々上演されるの普通にキツいよ。


 要するに、フリアン家は地上げにあったのだ。

 緑の蔦はフリアン家に近付き、取り入って信用させてから両親に毒を盛る。

 弱っていく両親は生活がままならなくなってくる。子供のフリアンの養育にも影響が出る。

 そこを町役場に通報すると、例の公権力による強制収容が発動。フリアン家の土地家屋は町の所有に、一家はそれぞれの「家」へ。


 ……はーん? さては町長もグルだな。

 判らんけど、こういう時は大抵そうだ。私は詳しいんだ。

 しかしフリアン家の土地というか畑って、結局今は難民に提供されてるだけなんだよなあ。

 なんでまたそんな気の長い仕掛けで平民一家を追い出したのか。

 強盗にでも入られた体で皆殺しにしたら簡単なのに。いやそんなこと起こって欲しくないけど。

 一体、誰が、どこで、どんな得をしているの?


 そしてその後、両親が亡くなって正真正銘孤児になったフリアンに調子のいいこと吹き込んで、今回の誘拐事件の為に都合良く動かしていた、と。


「別に本気で使おうと思ってたわけじゃねえよ。そこにあったからじゃあ活用すっか、程度の道具みたいなもんさ。俺らのこと本気で信じてんだからガキはチョロいわ。親が死んだのは俺らの仕込みなのになァ。結構長い間笑わせてくれたよ」


 ジーナが再びグリーシンを蹴り始めたので私は離れた。

 血が飛んで来るんだもん。


 さて。

 結構前から気付いてはいたが、私達はあえて無視していた。

 どうとでもなるという余裕(またはどーにでもなーれという諦観)があったからだけど、聞かせた方がいいという合理的判断からだ。

 後で説明するの面倒だし、信じるかどうか判らないじゃない? 一次情報を直接渡せるならその方がいい。


 と、いうわけで物陰で立ち尽くすフリアン少年へと視線を向けた。


 私は途方に暮れた様子のフリアンに駆け寄り、持っていた棒きれで力いっぱい殴りつけた。ジーナが折った棒の片割れだ。

 この期に及んで逃げたらもう殺すしかないから足止めだよ。腹いせもあるけど。


 フリアンがぶっ倒れたところで襟首を掴み、引きずって戻る。

 一番驚愕してるのがグリーシンなのが何かすごい腹立つ。

 ヒューが心得たとばかりにフリアンを治す。

 思ったけど、この人ずっと無制限に魔法を使い続けてるよね。どんだけ泉がデカいんだろう。


「ぼく、は……」

「後で聞くから。子供達は無事?」

「あ、ああ……ベッドが並んだ大きな部屋があって、疲れてるからまず休めって」

「なんで館長達はこんなところにみんなを連れてきたのか、フリアンは知ってるの?」

「それは……」


 フリアンはグリーシンを見た。

 グリーシンは何かもう投げ出したようにため息をつき、目を閉じた。

 まあ普通に体中痛いんだと思う。


「ぼく達は、領都に連れて行かれたら、売られるから……山賊に襲われたことにして……逃げようって……」

「んだよそれ。あたし達がついてて山賊なんかに襲われっかよ」

「襲われてるじゃん」

「賊が内部にいたんじゃあしょうがね……すんません」


 賊が内部にいたどころか、護衛対象自体が賊だったんだから、そこはしょうがないか……。


「あ、あんた達傭兵は山賊の仲間だって……」

「はーァ? なんで賊の仲間雇うんだよ?」

「そ、れは……ギルドに押し付けられたって」

「何言ってんだ?? 全然わっかんねえ」


 私も判らないけど、判ることは一つある。

 フリアンは徹頭徹尾デタラメを吹き込まれてここまで来たってことだ。

 君そんな騙されやすくて大丈夫なの、ご両親もそうだったの。いや善良だったのか。悪いのは悪い奴の方だ。

 フリアン家に悪い点があったとしたら、それは運だろう。


「あのさフリアン。今まで誰に何を教えられてきたのか知らないけど、こいつらはクズの賊だし、このクズ共を雇ってたのは館長だよ」

「そんな……」

「いいよ急に信じなくて。でも私達の邪魔をしないで。邪魔をするなら、ちょっと死んでてもらうよ」


 あとで蘇生するけど。

 ……こう考えると一時的に相手を無力化しておく方法として優秀だよなあ。

 どうせ死んでるし後で治すんだから転がしておく場所とか気にしなくていいし、水とか空気とかそういうのも気にしなくていいし。

 ……神官はこういう感じでイカれていくんだろうか。


 未だ混乱しているフリアンはそれでも神殿内部へ案内してくれることになった。

 グリーシンとトマスは殺した。

 私もヒューも見ていたのでまあ後で蘇生することになる。相談した結果、いったん赤鰐に引き渡すことになったからだ。赤鰐の方からギルドに報告したり何か色々するらしい。お任せ。


 ちなみに、そもそもなぜ今回の道行きに赤鰐傭兵団を雇ったのかという点は、緑の蔦が別口で赤鰐の殺害依頼を受けていたからだった。

 そっちは私達と関係ないので、それも込みでお任せだ。



 ◇ ◇ ◇



 誰も帰ってこないんだからもう完全に警戒されてるだろうなと思ったんだけど、フリアンが言うにはそうでもないのでは、とのことだった。


「館長達だけで何か色々忙しくしてて……緑の蔦も他の人は寝てると思う。二人はヒマだから残りの荷物取りに行くって出て行って、帰ってこないからぼくは様子を見に上がってきただけだから」


 それなら待ち伏せは避けられるかなあ。

 私達はジーナを先頭に地下神殿へ向かって階段を下りていった。



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