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流されて帝国  作者: ギョラニスト
89/205

88話

久しぶりのナディア視点です


ベッドヘッドに背中を預け、テキパキと動くエアリーとグレタを眺めていた。


頭だけがカンカンとし、顔は火照っているのに身体は寒い。

いわゆる風邪と言うヤツね


「さ、ナディア様お召し物脱がせますからちょっと腕を上げて下さい」


エアリーに言われノロノロと腕を上げ袖を抜いてもらう。身体が怠くて仕方ない。


エアリーはさささっと私の身体を拭くと、洗い立ての寝具に着替えさせてくれた


「ナディア様、食欲はどうですか?今日も食べられそうですか?」


「ありがとう、エアリーいただくわ」


こんなに高い熱を出したのは何年ぶりかしら?

きっと疲れが出たのよね?色々あったもの…


不思議な事に具合は全然良くないのに食欲は全く衰えない。


「今日はオートミールのリゾットと野菜たっぷりポトフ、サンドイッチ、川魚の蒸し焼き、果物等色々取り揃えてみました」


ジャーンと言う音が聞こえそうな勢いで、アイラさんが取り急ぎ作ってくれたベッドテーブルに食事を並べた。


「ありがとう。美味しそうね」


薄めだけど、身体に優しい味付けでスルスル口に入ってくる。

そろそろお腹がいっぱいだわと思ったところで


コンコンコン


扉の外からコニーさんが


「ナディアちゃん、殿下が帰還されて会いに来てくれたわよ」


え?ここに来たの?帰還したとは聞いていたけれど、私の具合が悪いから、今日はもう来ないと思っていたのに

嫌だわ。寝具のままだし


「あの、ちょっと待ってもら…」


ガチャ


「ナディア、熱を出したと聞いた。大丈夫か?」


言いながら殿下が入ってきた


「ディラン殿下、返事を聞いてから扉は開けて下さい」


相変わらずデリカシーのない殿下に少しムッとしながら言うと


「…元気そうだな…」


私のベッドテーブルの上を見て呟いた


「なっ!全部食べる訳では…」


グラリと目が回ってボスっとベッドにもたれかかった。


「ナディア様!」


「あ〜大丈夫よ…ちょっと大きな声で喋ったから…」


グレタが駆け寄ってきたついでにガウンを羽織らせてくれた。


エアリーは食器やらカラトリーを片付けていた時、ツカツカと寄ってきた殿下が私の首に触れてきた。


え?締められる?


「大分熱いな…」


「熱は高いですけど、割と大丈夫です。怠いくらいで…」


「ぷっぷ」


突然ぷっぷちゃんが鳴いた。カワイイ


「あら?ぷっぷちゃんお腹空いたの?」


「ぷっぷっぷ」


私達が仲良く会話していると、殿下が眉間に皺を寄せ尻尾から持ち上げた


「こやつが魔物か…」


「ぷっぷーーっ」


ぷっぷちゃんは手足をバタつかせている


「ディラン殿下!ぷっぷちゃん驚くのでやめて…」


あぁ、ダメだわ…目が回る。

再びベッドにもたれかかると


「殿下!ナディア様を興奮させないで下さい」


「あぁ…すまない。これで少しは楽になるか?」


目を瞑り回る視界をやり過ごしていると、首の辺りがヒヤリとした


「…?」


「首や脇の下を冷やすと身体が少し楽になると思って」


「言われてみれば…ありがとうございます?」


これってお礼を言うところで合ってるわよね?


「しかし、本当に見た事ない魔物だな」


ぷっぷちゃんをしげしげ眺め言う


「ディラン殿下でもわからないのですか…」


「あぁ。リシャール、わかるか?」


殿下の後ろからリシャールさんが顔を覗かせ


「ん〜僕も見た事ないや。ナディアちゃんの従魔なんだって?」


「ええ、まぁ」


正直言って従魔と言うよりペットな気がするけれど。


リシャールさんはぷっぷちゃんのアゴらしき場所の下を指で撫でながら


「な〜んか妙な感じがするねー」


妙?ぷっぷちゃんは妙なのかしら?


「どうゆう意味だ?」


「え?ディラン気づかない?ぷっぷちゃんに触ると魔力吸われるんだけど」


「なん、だと…」


殿下はショックのあまりしばらく固まった後、ものすごい勢いでぷっぷちゃんを鷲掴みにした


「ぷっぷぎゃ〜」


「ちょ、ちょっと止めてください!ぷっぷちゃん死んじゃいます!あぁ〜…」


「キャー!ナディア様!」


エアリーとグレタが身体を支えてくれたけれど、目が回る…

けれどこのままではぷっぷちゃんが…


「ディラン、ちょっと落ち着いて。ぷっぷちゃん本当に死んじゃうよ」


リシャールさんの言葉に、ハッと気づいた様に我に帰って殿下はぷっぷちゃんを桶に戻した


「ぷ〜ぷ〜」


悲しげな鳴き声で桶をよじ登り私の手にまとわりつくぷっぷちゃん。


可哀想に…怖かったわよね。

よしよしと頭を指で撫でていると


「本当に…魔力が減っている…」


殿下は自分の両手を見て驚いていた


「凄いよねー。世の中こんな魔物もいるんだねぇ」


呑気なリシャールさんの言葉に殿下は


「ナディア、頼む。この魔物譲ってくれ!」


「え?従魔って譲れるモノなのですか?」


「ぷぎっ」


ぷっぷちゃんは私の指に尻尾を巻きつけ震えている。

譲られたくないのかしら?


「ディラン、無茶言うなよ。従魔だよ」


「くっ…ならばどこでこの魔物を見つけたんだ!」


どこで…?


「どこだったかしら?」


先程から頭が上手く回らない


「殿下、ナディア様は具合が悪いのです。もうここまでになさってください」


エアリーにピシャリと言われ


「…っ。そうだった、悪かった…見舞いに来たのに」


「いえ、私もお見苦しい格好で申し訳ないですわ」


正直早く横になりたいから帰ってくれないかしら?と思っていたら、殿下がジッとコチラを見ている


「あの、何か…?」


「いや、その、しんどそうだと思って…」


「お気遣いいただきありがとうございます」


たまに優しいのよね。

この殿下…


「鼠蹊部…股の辺りを冷やすと尚良いらしいのだが…」


「お断りしますっ!」


「殿下!!」


「やらせねぇよ!」


殿下はラッサ大尉とリシャールさんに羽交締めにされ連行されていった。


本っ当デリカシーがない。

今のやり取りで熱が一気に上がった気がした。



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