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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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84話


ただでさえ王都を出るのが遅れたのに、南門から出たから更に時間がかかっている。


その上ショーンも撒かなければならない。


予定より早めに街道に入り、大き目な街パルムドに夕刻前にはたどり着いた。


ちなみにハリーは王都を出る時女装は解いた


「バートンさん今日はもうパルムドで一泊ですか?」


「バカ言うな。商人カード処分したらすぐ出発だ」


「えええっ⁈俺もう腹減って死にそう」


「大丈夫だ。人間一日食べなくても簡単には死なん」


「馬!馬休ませた方がいいですよ。きっとクタクタですよ!走らなくなっちゃうかも」


「馬はこの街で交換するつもりだが?」


「う〜…ご飯は食べましょうよぅ」


泣き言になってきたハリーを見て、そう言えば大食いだと言っていた事を思いだした


「わかった。飯は食おう」


王都とは違いヤケに賑わっていると思っていたら、街の中央広場に商隊が来ていた。


人の流れに乗せられ商隊まで辿り着くと、近くで客と商人の会話が耳に入った


「最近の王都はどうよ?相変わらず賑わってるのか?」


「シラナいよ。王都今ヨクない噂いっぱい」


何だと?ハリーと目配せし話が良く聞こえる所まで行こうとしたら


「お兄さん、香辛料イラナイか?」


目の前の馬車から話しかけられた


「え?香辛料あるの?」


ハリーが驚いた様に聞くと


「ちょっとタカいけど、まだアルよ。次イツ来るかわからない」


「あ、じゃあコレとコレ、後ソレも10袋ずつ。すげぇ胡椒もあるのか。じゃあコレも10袋」


ハリーは小分けにされた香辛料を大量に購入した後


「この後王都に行くのか?俺、少し買い過ぎたかな?」


「イカないよ。今王都に行ったら全部トラれる。この後南に下るダケ」


「え?そうなの?誰に取られるの?」


「ワカラナイ。でも、他の商隊王都行った。モドラナイ」


悲しそうに商人は言った。


その後俺達はその商隊の荷物の中に商人カードを入れ、その場を立ち去り食堂に入る。


「バートンさん、王都は俺達が思っているより相当ヤバいですね」


ガツガツと食事をしながらハリーは言う。

あの商隊は今までもこれからも同じ事を言い続けるだろう。


王都には更に物が入らなくなる。急いでヒルドン村に戻らねば


「あ、大将!エール2つと、このソーセージの盛り合わせと川魚の香草焼き、あと特製ピクルス追加で」


まだ食うのか。

既にうさぎ肉のシチュー、オートミールのリゾットを2人前ずつ平らげているのに…


「やべぇ。うめぇ。この鳥肉の炙り焼きも食いてぇ。バートンさんが頼んだ鹿肉のヤツ美味かったっすか?頼もうかな?」


そして更に追加し始めた


「ハリー、ちょっと食いすぎじゃないか?」


「何言ってるんすか。今朝からまともなメシ食ってないんですよ。補充しないと。次いつちゃんと食べれるのかわからないんですから」


そうか。

コイツはちゃんとメシを食わせないとこんな事になるのか…


周りの客は最初驚いた様に見ていたが、その内に


「もっと食え〜!」


「この店の食糧庫空にしていいぞ」


などおかしな歓声が上がり始めた。


「あいよ!お待ち!!」


バンバンバーンとテーブルに食事を並べこの店の大将は不敵に笑う


「兄ちゃんの胃袋には負けねぇぜ!ちなみにこの店の一番のおススメは小熊の香草丸焼きさ」


「よし!それ一つ!」


ウォーと店内から声が上がり、店の外から客が覗きこみ始めた。


…コイツ俺達が追われていて更に急いで戻らねばならない事を忘れているのではないか?


案の定覗き込み客の中にショーンがいるのを発見した。

しかも物凄く睨んでくる。


あの時ショーンは片手で俺の魔力を防いでいたが、顔なんて上げれなかった。


誰が魔力を放出したのか分からないはずなのに…


それとも腹が空いているとかか?


試しにソーセージを一本投げてみたらものすごい勢いでキャッチし食べ始めた。


「スミマセン。手ぶらで王都を出たので持ち合わせがなくて。このお代は後で必ず」


「何で手ぶらで王都から出てきたんだよ」


結局ショーンをテーブルに呼んで、何か食うか?と聞いたところ、いくつか注文し今に至っている。


相当腹を空かせていたみたいで、ハリーと2人でガツガツたべている。


「気がついたら2人いなくなっているし。部屋の中の幾つかと、バシュール殿下に直接身に着けて頂いていた防魔の魔道具がことごとく壊れていて…」


防魔の魔道具なんてあったのか…だからあの音


「あの魔道具はそうそう壊れる様には出来ていない。そもそも膨大な魔力を防ぐ為の物なのにっ」


食事をしながら歯を食い縛ると言う器用なマネをしながらショーンは喋り続ける


「お陰でウチの商会の信用丸潰れですよ。折角マルゴロードに新たな活路を見出したところだったのに」


「え?マルゴロードに行くつもりだったのか?」


「言いたかないけど、今のドレナバル王都で商売を続けるのは…」


「それっていつから?いつから考えていた事?あ、大将、デザートにこの果物盛り合わせ一つ」


「僕が父から聞いたのは4ヶ月程前だから父はもっと前から考えていたんだと思う。あ、大将、僕にも同じ物一つ」


「ショーンはあんまり商売に関わってないの?」


「僕はもっぱら新しい魔道具の開発をしているんだ。商才はあまりない。僕はカルロス・ビサックの養子だから」


どうりで似ていない訳だ。

妙な納得をしていると


「僕はエルザラン師の娘エマと伝説の魔法使いリシャールの子供なんだ」


ブホッ…何だって⁈


「汚いなぁ。バートンさんだっけ?邪魔しないでよ」


ショーンは食べながら悪態をついた


リシャールが父親?まさか…ハリーは気まずそうにこちらを見た後


「そ、それって本当の話なのか?初めて聞くんだけど…」


「僕は10才まで祖父母に育てられていたんだ。祖母が言ってたよ。リシャールはまだ小さい僕と母を捨て何処かに行ってしまったと」


リシャールは望んで俺の世話をしていた訳ではない。でも、まさか母上が強引にリシャールにやらせた?


「お母さん!お母さんは?一緒に住んでなかったの?」


焦ったようにハリーが聞くと


「母は…僕を生んだあと…」


そう言ってショーンは食べる手を止めて俯いた。そんな…母親を亡くしたばかりの子供から父親をも奪ったのか?


俺の母の親戚だと連れて来られたとリシャールは言っていたが、まさか拉致られたのか?


母上は悪魔か何かなのか…




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