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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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79話


「いい?メル、夜は薄暗い中でも顔がハッキリする様、色味も濃いけれど昼間は明るいから。色は薄目に、線も細く引くのよ」


「はい。ジュリアンさん」


ここは店の裏手にある庭で、メルはジュリアンに手ほどきを受けながらハンナの顔にメイクを施す。


さながら青空教室といった所か。


「なぁ、ジュリアンがやるんじゃねえの?」


「あら、メルの技術凄いのよ。アタシがちゃぁんと教えるから、大丈夫よ〜」


「いや、そうじゃなくて、俺から金取ったよな?ちゃんとメルちゃんに半分支払えよ」


へぇ…こいつチャランポランなヤツかと思っていたが、中々の男じゃないか


「わかってるわよ。この子の借金からちゃんと引いとくわよ〜」


借金…そうだよな。

このメルと言う娘はここに売られてきたのだ。


貧しい農村地帯や貧民街に生まれ落ち、魔力をあまり持ち合わせていない者が売られると聞く。


両地域全く減る気配もない。

元老院に言わせれば需要と供給があると言う事、飢え死にするよりマシだ。と言うが、本当にそうなのだろうか?


俺は戦場を守ってさえいれば、ドレナバル国民は平和に暮らせると思っていたが、それだけではダメなのではないか?


遷都するからにはここと同じではダメだ。

まずはここまで王都の景気や治安の悪化の原因が何なのかハッキリさせなければ。


ふと見ると既にメルの顔色が少々悪くなってきている


「まだ時間がかかるだろう。俺はちょっと西地区の商会長の所へ行ってくる。終わったら来てくれ」


そう言って店を出る。


花街を出ると先程より大分人通りが増えた街並みが目に入った。


観察する様に街中を歩くと、やはり以前よ人々の活気が無い様な気がする。


西地区の商会長は確か…どんな人物だっただろうか? 


まぁ行けば分かるだろうと思っていた自分は戦バカになっていたのかもしれない


「お約束がない方とはお会いになれません」


けんもほろろとは正にこの事


「どうすれば約束を取り付ける事ができるんだ」


商会長カルロス・ビサックは普段自分の商会『ビサック商会』にいる。


西地区にある全ての商会の代表の様な人物だ。

当然ビサック商会はこの辺りで1番の大きさを誇る。


「受付で名前、住所を記入し、持っているならギルドカードの提示をしてもらう」


"それでも会う事なんか殆ど無いけどな”


そんな声が目の前の男から聞こえた。


「貴族ならどうなる?」


「手続きは一緒だ」


"会えるか会えないかの違いだけで“


嗤いながら言う男。

腹立たしい…魔力全開にして乗り込むか?


「お兄ちゃん!」



何かが腕にしがみついた


「お兄ちゃん、お待たせ」


「ハリ、ハンナ…随分早かったな」


昨日の美少女風ハンナがそこにいた。

そして俺はいつからお前より年上になった?


「うん。この方に馬車で送ってもらったの」


「やぁ、無事に兄上と会う事が出来て良かった」


「…どうも」


ニコニコと愛想良く立っている男は俺より少し年上か…どうする?

冷静になってみれば騒ぎはマズイ。


ここは一旦ハンナを連れてここを離れるか


「お兄ちゃん、この人この商会の息子さんなんだって」



「父に用事があるなら取り次ぐよ。可愛いハンナの為なら」


コイツもハンナの顔にやられた口か…


「坊ちゃん勝手な事されては困ります」


「いいじゃないか。こんなに可愛いお嬢さんが遠路はるばる来てくれたんだ。固い事言うなよ」


チラとハンナを見ると片眉を上げ俺を見た。


遠くから来たとハンナは言ったのか?

それともただの言葉遊びで遠路はるばると?


「こっちだよ」


「坊ちゃん!叱られるのは私です!」


「大丈夫。上手く言うから」


店の中をずんずんと進み、奥にある扉を開ける。

更に奥に入ると階段があり2階へと上がった。


コンコンコン

ノックをしてから、返事を待たずに部屋へ入った


「父さんお客さんだよ」


「何だ。いきなり」


父親と言う事は彼がカルロス・ビサック。


中肉中背で白髪混じりの髪を後ろに撫で付け、口髭を生やしていて威圧感がかなりある。


叩き上げと言うか雑草の様な逞しさを醸し出している。


こんな父親からこんな優男が生まれてくるのかと変な感心をしてしまった


「やだなぁ、父さん常々会って話がしたいって言っていたじゃないか」


!!


途端に俺とハンナに緊張感が走った。

俺達に会いたかった?


このショーンと言う男は俺達を知っているのか?


「ワシが話したいのは陛下かディラン殿下なんだが?この方が?」


カルロス・ビサックが胡散臭さそうに俺を見た


ショーンと言う男、俺の正体を知っていたのか…

これはどうする…

絶好の機会と言えばそうなんだが…


「やだなぁ父さん、殿下が街中にいる訳ないじゃん。戦場に行ってるか引きこもるかなんだから。こっちの女装している方。セラ・パーカー氏の腹心の部下、ハリーさんだよ。ごめん。ファミリーネームは知らないんだけど」



ハリーの女装を見抜いたのに、俺の事は知らないらしい。


引きこもり等と言う不名誉は置いておいて、チラリと横を見ると戸惑っているのか安心しているのか微妙な顔のハリーがいた。


それにしても、この2人全く心が読めないのはどうゆう事だ?


「何だと?あの、ディラン殿下の側近のセラ・パーカー氏の?」


目線をハンナに向け訝しむビサック。

ハリーはどう動く気だ?


「初めまして。セラさんの部下ハリーで今はハンナです」


ニッコリ笑って挨拶をした。

コイツきっと心臓に毛が生えてるに違いない。



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