表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流されて帝国  作者: ギョラニスト
79/205

78話


朝の街並みは普段通りに見えるが、やはり閉まっている店がポツポツとあり、ほんの少し人々の元気が無い様に見受けられる。


「でん…バートンさんお腹空きました。何か食べましょう」


どピンクの薄いカーテンを顔に巻き付けたハンナ風ハリーが話かけてくる。


この格好で何か尋ねられても俺なら逃げるが、どうするつもりなのだろう。


開いているパン屋で大量のパンを買い近くの広場のベンチに腰掛ける。


「何日分の食糧なんだ」


「え?コレは朝食ですよ。さっ、バートンさんも食べて」


そう言うなりバクバクとパンを食べ始めたハリー。

パンを2つ食べた所で胸焼けがしてきた。


「もう食べないんですか?私貰っちゃいますね」


更に俺の分まで手を出し、無事満腹になったハリーは残ったパンを袋に入れながら


「それでどうやってここから出ます?昨日バートンさん探している時、西門見たんですけど、ひどく焦げてましたよ。

爆炎魔法ですかね?南門や東門の方が出やすいですけど遠回りですよね?」


「その件なんだがハリー、ちょっと頼みたい事があるんだ」


「ハ・ン・ナですよ、バートンさん。バートンさんが王都に残って私に先にハイドン村にと言う頼みなら聞きません」


…顔や態度に出ていたか?


「あのですね、私バートンさんを無事連れて行くってセラさんと約束したのです。バートンさん昨夜から様子がおかしかったので、もしかしたらと思っていましたけど」


「いや、少し時間がかかるかもしれない。セラ達が心配するだろうし、一言遅れると…」


「何ヶ月も掛かる訳じゃないですよね?だったら誤差の範囲ですよ。さ、とっとと行きますよ」


「ハリ…ハンナ一体どこに?俺はこれから…」


「私の情報網を甘く見ないでくださいよ〜。

昨日見つけたんですよ、知り合いの店でグレタ並の天才を。

でん…バートンさん探している時に」


こいつ本当に俺の事探していたのか?

俺はついでなのではと言う疑惑が湧いてきた。


そして連れて行かれたのは花街。

こいつ絶対俺の事探していなかっただろう。


もしくは普段から俺がこのような場所に出入りしていると思われた?どちらも許さんと思っていたら


「メルちゃん!おはよう」


「あんた昨日の…」


まだ幼い位の女の子に話しかけていた。

女の子は多分10才にも満たない子供にみえるが、売られたのか?


「今日はメルちゃんに頼みがあってきたのよ」


「アタシ今掃除中。おっさんにかまってらんないの」


「あら〜私のどこがおっさんかしら?今日はメルちゃんにパン持ってきたのよ」


先程残ったパンを袋ごと渡すと、メルと言う少女は目を輝かせパンに齧りついた。


花街に売られてくる少女は一定数いる。

いくら安定していた国でも花街はなくならないし、そこで働く人の仕事を強制的に奪う事もできない。


2人で少女が食べ終わるのを待っている間ハンナが


「俺昨日ここ通りかかった時、いきなり『ねぇおじさん、なんで女の人の格好しているの?』って話しかけられたんですよ」


「昨日のハンナを見破ったのか?」


「ええ。一発で。しかもその目元はどうやってやるのかとか、色の配合は何かとか質問攻めに合いまして。最後に口紅はもう少し色の濃いヤツを選べと」


あんなに小さな子供が見破ったとは…

無心でパンを貪り食べている姿は、どこにでもいる子供にしか見えない。


食べ終わったのを見てから


「メルちゃん食べ終わったならメイクお願いしていいかな?」


少女は頷くと俺を見て


「そっちのおじさんはいいの?」


おじさん⁈まさか俺の事なのか⁈

いや、落ち着け。相手は子供だ


「いや、俺はいい」


2人は店に入って行ったので、店の前で待っていると


「おや、お兄さん、こんな朝早くお盛んなんだねぇ。悪いんだけど、この時間まだやってないんだよ」


この店の女将らしき女が出て来てあらぬ疑いをかけられた


「いや、客ではない」


とたん女将は怪訝な顔になり


「あんた、身請けしに来たのかい?」



「いや、そうではなく…」


何と言えばいい?

仲間が今女装の為のメイクを施されていると言っていいのか?

答えに窮していると


「あんたまさかウチの子たぶらかして連れ出そうってんじゃないだろうね」


「いや、そうでもなくて…」


「バートンさん、お待た…あれ?ジュリアン?」


「…ハリーあんたまた来たの?昨日の今日で何の様だい。そんな厚化粧で」


「厚化粧⁈ちょっとメル!どうゆう事?」


そこにいたのは確かに厚化粧のハンナだった。

昨日とは別人かと思う程に


「あぁ、メルに頼んだんなら仕方ないね。あの子は夜の女用の化粧しか知らないんだから」


「だ〜〜」


頭を抱え座り込んでしまったハンナに


「もう諦めて男のままでいいんじゃないか?」


優しさから出た言葉だったが


「バートンさん⁈さっきも言ったけど、全っ然違うんだから!ヤローと美少女じゃ」


「そうは言ってもヤローと厚化粧の女じゃ大差ない気が、むしろ厚化粧の女の方が分が悪いと言うか…」


もう諦めてハリーを連れこの場から離れよう。

のんびり王都観光をしている場合ではない


まずは西地区だけでもここ1年どれだけの店が閉められたか確認しておこう。商会長の所へ行けばいいか?


それから図書館へ行きグレタの言っていた本を探す。

治安は悪いだろうけど貧民街も見に行っておきたい。

あとは…


「ねぇ、アタシやってあげようか?美少女メイク」


「「えっ?」」


「勿論タダにはならないけど」


ニィとジュリアンは笑った



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ